新・ことば事情
6750「検視官と検死官」
ダン・ブラウンの最新刊『オリジン』(角川書店、越前敏弥訳)を読んでいます。いつも通り面白いです。その中で「おや?」っと思ったのが、
「検死官」
という表記です。これは日本の新聞・放送では、
「検視官」
となるのですが、海外(この場合は、物語の舞台・スペイン、あるいは主人公ラングドン教授の国・アメリカ)では違うのでしょうか?読み方は共に、
「けんしかん」
なので気付きにくいのですが。
ちょっとネット検索してみたら、やはり、日本と海外では違うようです。
日本の「検視官」は、
「死亡推定時刻や死因などについて調べるが、遺体の解剖はしない」
(解剖は監察医)のに対して、海外の「検死官」(coroner)の場合は、
「死亡推定時刻や死因などについて調べる、遺体の解剖もする」
のだそうです。そして、昔は日本でも、
「検屍官」
と書いたそうですが、
「屍」
という漢字が「表外字」のために「検視官」になったようです。「死」を検査するのではなく、「屍=死体(遺体)」を検査するのですね。
読売新聞社で校閲をしていて、現在読売テレビに来て頂いている中村さんに伺ったところ、
「そう言えば昔、『ドクター刑事クインシー』というのがあって、この主人公は『検死官』だったように思いますね。現場に駆け付ける車の"どてっ腹"に『coroner』と書いてあったように思います。」
ネット検索では、
「Dr.クインシーは、ロサンゼルス郡検死局に勤務する検死官(M.E.= Medical Examiner)」とありました。これも、
「検死局」「検死官」
なのですね。海外と日本では「使い分け」なのかな。