新・ことば事情
6747「魚たちにゴハンをあげる」
3月7日の読売テレビ「かんさい情報ネットten.」で、黒木千晶アナウンサーが紹介していた「京都水族館」。開館6周年を迎えたそうです。もう、そんなになるのかあ!まだ行ったことがないので、一度行ってみたいです。
その原稿で、黒木アナウンサーが読んだフレーズに、
「魚たちにゴハンをあげる」
というのが出て来て、
「うーん、どうなんだろう?」
と思いました。これが普通の「ストレートニュース」なら、
「魚にエサをやる」
ですね。でも「かんさい情報ネットten.」では、「やわらかい話題」として「魚」を「擬人化」して、
「魚たち」
としています。だから、
「ゴハン」
というのも「擬人化した魚」に対してなので、本来は、
「えサ」「エサ」「餌」
と言うところですが
「擬人化の結果としては、まあOK」
かもしれません。しかし、どうしても引っかかるのが
「あげる」
です。これは、
「やる」
でいいのではないでしょうか?つまり、妥協の結果としては、
「魚たちにゴハンをやる」
じゃないのかなあ。
但し、この言葉を発するのが(「しゃべり手」が)、
「男性なのか、女性なのか」
「年齢はどうか」
また逆に「聞き手」、つまり、
「『視聴者』は、どういった年齢層なのか」
ということによっても、
「この言い方を使っていいかどうかが、変わってくる」
ような気がします。「20代半ばの女性である黒木さん」の場合は、
「許容」
されるかもしれませんが、「50代半ばのおっさんである私」が使ったら、やはり、
「放送では許されない感じ」
がします。この話は、実は大変コワイのであまりしたくありません。つまり、
「何歳までなら、この言い方をしていいのか?」
ということに、必然的になるからです。しかし実際のところは、
「選挙権」
のように、
「年齢で、キッチリ線引きができるものではない」
ということになるでしょう。
「人による」
んですね、これは。だから余計に難しい。
そして、「擬人化」するときの、
「○○たち」
ですが、「○○○」と「3文字以上」だと落ち着きます。
「ヒツジたち」「パンダたち」「ゴリラたち」「カエルたち」「メダカたち」「イワシたち」
「クジラたち」「メジロたち」「ツバメたち」「キリンたち」「シマウマたち」「アフリカゾウたち」「チンパンジーたち」
などは、なんとなくOKのような気がします。
「ゴジラたち」
もいけるかな、「クジラたち」がいけるんだから。でも同じ「3文字」でも、
「イタチたち」
は、ダメな気がします。語呂がね。「タチ」が、繰り返されるので。
そして、この「○」が「2文字以下」(○○)はダメな気がするのです。
「ゾウたち」「ワニたち」「ウマたち」「カメたち」「シカたち」「カニたち」「カバたち」
「カたち」
は、ダメな気がします。しかし同じ「2文字」でも、
「イヌたち」「ネコたち」
は「OK」のような気がします。やはり「ペット」として人間の一番身近な存在だからでしょうかね。
今、日本新聞協会の新聞用語懇談会・放送分科会で『放送で使う言葉・敬語編』という冊子の改訂作業をしているんですが、
「犬にゴハンをあげる」「花に(お)水をあげる」
などと同列で、
「魚たちにゴハンをあげる」
も載せるべきかもしれませんね。少なくとも討議・議論する必要があるように感じて来ました。