新・ことば事情
6722「羽生さん」
2月27日、日本選手団帰国報告会の生中継。熱い司会は、ご存じ元プロテニスプレーヤーの松岡修造さん(50)でした。
時々、熱さが空回りする部分もご愛嬌、「スポーツ愛」あふれる司会でした。
その中で、「これはスゴイな」と思ったのは、
「羽生さん」
というように、27歳も年下の羽生弦選手(23)に対して、
「さん付け」
で呼んでいたこと。当たり前と言えば当たり前のことですが、羽生選手は、松岡さんから見れば「息子」の年齢に当たる人。そういった人に対しては、往々にして、
「羽生くん」
と、「くん付け」で呼んでしまいがちです。その方が、
「66年ぶりの五輪2連覇を果たした世界チャンピオン・偉人」
であっても、です。もちろん「くん付け」のほうが、
「親しみを感じている雰囲気が出る」
ので、一概にダメだとは言えないのですが、「日本選手団帰国報告会」という公の場での司会は、いわば、
「国民の代表として、メダリストたちに質問をする立場」
なので、そこは、
「『親しさ』よりも『リスペクト』と『客観性』」
を担保すべきだと、私は思います。なかなか、これができない人が多いと思うのですが、松岡さん、さすがです。
根本には、同じ「"世界"を知っている一流のスポーツマン」としての、
「リスペクトする気持ち」
があるのだと思いました。そして普段から「さん付け」で呼んでいるから、無理して「さん」を付けている感じがなく、自然に醸し出される選手への敬意が感じられ、その中に、
「親しみの表現」
も、バランスよく盛り込んでいるように感じました。