新・ことば事情
6714「吃驚」
2月21日、俳優の大杉漣さん(66)が急死されました。驚きました・・・。
その翌日22日の「ミヤネ屋」の放送で、タレントの東国原英夫さんが出したツイッターのコメントの「吹き替え」をしてくれと、Sディレクターに頼まれました。そこには、こう書かれていました。
「吃驚(きっきょう)」
きっきょう?
たしかに「音読み」したら、そう読めなくはないけど、言わないでしょ、そんな発音の言葉。これどう考えても、
「びっくり」
と読むに違いないですから、そう指摘したのですが、
「でも・・・」
とネットを検索して、
「吃驚(きっきょう)」
という表記を見せて来ます。
「じゃあ『びっくり』で変換してみろよ、出るから」
とやらせてみると、果たして、
「吃驚」
が出て来ました。Sディレクターは「吃驚」していましたが。
これを「きっきょう」と読んでいたら、私が恥を書くところでした。
(追記)
川崎市の西尾さんからメールを頂きました。
『こんにちは。川崎の西尾です。
「吃驚」を「びっくり」と読むことは知っていましたが(たぶん夏目漱石あたりを読んで)、
「きっきょう」が本来の読みだと思っていました。漢語か和製語かは知りませんけど。
手もとの国語辞典には、一部を除いて「きっきょう」と「びっくり」の両方が載っています。「きっきょう」の用字は「喫驚・吃驚」の順で、「びっくり」はなぜか「吃驚・喫驚」の順です。「喫」は「吃」の代用字ですね。吃水→喫水など。
いずれにしても、「きっきょう」は書き言葉専用で、口語では使わないことばかと思います。
以下、見出し語のみ抜粋です。(表外字・表外読みの記号は省略)
・『広辞苑』(第七版)
きっ-きょう【喫驚・吃驚】<略>
びっくり ①(当て字で「吃驚」「喫驚」と書く)<略>
・『新明解国語辞典』(第七版)
きっきょう【喫驚・吃驚】<略>
びっくり【吃驚・喫驚】<略> [表記]「吃驚・喫驚」は、近代文学からの用字。
・『明鏡国語辞典』(第二版)
きっ-きょう【喫驚・吃驚】
びっくり <略> [表記]「吃驚」「喫驚」とも当てる。
・『小学館現代国語例解辞典』(第五版)
きっ-きょう 喫驚(吃驚)
びっくり(吃驚・喫驚)
・『三省堂現代新国語辞典』(第五版)
きっきょう【吃驚】《喫驚》<略> [文章語]
びっくり <漢字表記なし>
・『三省堂国語辞典』(第七版)
きっきょう <見出し語なし>
びっくり[吃驚・喫驚]<略>
・『岩波国語辞典』(第七版)
きっきょう【喫驚】<略>
びっくり <略> ▽「喫驚」「吃驚」とも書いた。
西尾さん、詳しく調べてくださって、ありがとうございます!
(2018、3、5)