新・ことば事情
6709「了解しました」
「了解しました」
という言葉は「敬意が足りない」ので、
「承知しました」
と言うべきだ、などと、よくビジネスマナー本などに書かれているようです。
「承知しました」は「承(うけたまわ)る」という漢字が入っているので「へりくだっている感じ」が強いのでしょう。それに対して「了解しました」の「了」「解」には「謙譲」のニュアンスが無いということなのでしょうね。
しかし『三省堂国語辞典』編纂者の飯間浩明さんは、
「そんなことはない」
とこれを否定しています。
私も委員として出席している「新聞用語懇談会・放送分科会」では現在、2004年に出された『放送で気になる言葉・敬語編』の改訂作業を行っているのですが、その中でもこの話が出ました。
そんな最中、たまたま読んでいた『隠蔽捜査7 棲月(せいげつ)』(今野敏)という警察物の小説の中に、
「了解しました」「わかりました」
といった返事がたくさん出て来るのに気付き、ピックアップしてみました。
主人公は警察庁のキャリアなのに左遷されて「大森警察署長」を務めているハードボイルドな「竜崎署長」です。ここで取り上げた言葉は全て「竜崎署長」に対するものです。
(ページ) (言葉) (話者) (対面?電話★?)
18 わかりました 貝沼副署長 対面
19 わかりました 笹岡生安課長 対面
39 わかりました 笹岡生安課長 対面
42 了解しました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
45 承知しました 斎藤警務課長 対面
45 承知しております 風間サイバー課長 ★電話
61 了解しました 関本刑事課長 対面
67 了解しました 斎藤警務課長 ★電話
69 わかりました 笹岡生安課長 ★電話
84 わかりました 風間サイバー課長 ★電話
89 了解しました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
90 わかりましたよ 風間サイバー課長 ★電話
90 わかりました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
91 わかりました 関本刑事課長 ★電話
97 了解しました 関本刑事課長 対面
97 わかりました 貝沼副署長 対面
99 わかりました 岩井管理官 対面
105 了解しました 関本刑事課長 ★電話
106 わかりました 田端捜査一課長 対面
123 了解です 関本刑事課長 ★電話
157 了解しました 根岸少年課係員 ★電話
159 了解しました 根岸少年課係員 対面
159 了解です 岩井管理官 対面
162 了解しました 岩井管理官 対面
206 承知しました 貝沼副署長 対面
214 了解しました 根岸少年課係員 対面
226 了解しました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
264 了解しました 戸高強行犯係
&根岸少年課係員 対面
264 了解です 岩井管理官 対面
264 わかりました 根岸少年課係員 対面
292 了解です 田鶴サイバー対策課員 ★電話
303 了解しました 岩井管理官 対面
309 了解しました 伝令に来た捜査官 対面
これを「わかりました」「了解しました」「了解です」「承知しました」で、分けてみます。
*「わかりました」=12回
18 わかりました 貝沼副署長 対面
19 わかりました 笹岡生安課長 対面
39 わかりました 笹岡生安課長 対面
69 わかりました 笹岡生安課長 ★電話
84 わかりました 風間サイバー課長 ★電話
90 わかりましたよ 風間サイバー課長 ★電話
90 わかりました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
91 わかりました 関本刑事課長 ★電話
97 わかりました 貝沼副署長 対面
99 わかりました 岩井管理官 対面
106 わかりました 田端捜査一課長 対面
264 わかりました 根岸少年課係員 対面
*「了解しました」=14回
42 了解しました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
61 了解しました 関本刑事課長 対面
67 了解しました 斎藤警務課長 ★電話
89 了解しました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
97 了解しました 関本刑事課長 対面
105 了解しました 関本刑事課長 ★電話
157 了解しました 根岸少年課係員 ★電話
159 了解しました 根岸少年課係員 対面
162 了解しました 岩井管理官 対面
214 了解しました 根岸少年課係員 対面
226 了解しました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
264 了解しました 戸高強行犯係
&根岸少年課係員 対面
303 了解しました 岩井管理官 対面
309 了解しました 伝令に来た捜査官 対面
*「了解です」=4回
123 了解です 関本刑事課長 ★電話
159 了解です 岩井管理官 対面
264 了解です 岩井管理官 対面
292 了解です 田鶴サイバー対策課員 ★電話
*「承知しました」=2回
45 承知しております 風間サイバー課長 ★電話
206 承知しました 貝沼副署長 対面
これによると、
-
了解しました =14回
-
わかりました =12回
-
了解です = 4回
-
承知しました = 2回
という頻度になりました。
次に「対面」か?「電話」か?で分けて見ます。
*対面
18 わかりました 貝沼副署長 対面
19 わかりました 笹岡生安課長 対面
39 わかりました 笹岡生安課長 対面
45 承知しました 斎藤警務課長 対面
61 了解しました 関本刑事課長 対面
97 了解しました 関本刑事課長 対面
97 わかりました 貝沼副署長 対面
99 わかりました 岩井管理官 対面
106 わかりました 田端捜査一課長 対面
159 了解しました 根岸少年課係員 対面
159 了解です 岩井管理官 対面
162 了解しました 岩井管理官 対面
206 承知しました 貝沼副署長 対面
214 了解しました 根岸少年課係員 対面
264 了解しました 戸高強行犯係
&根岸少年課係員 対面
264 了解です 岩井管理官 対面
264 わかりました 根岸少年課係員 対面
303 了解しました 岩井管理官 対面
309 了解しました 伝令に来た捜査官 対面
*電話
42 了解しました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
45 承知しております 風間サイバー課長 ★電話
67 了解しました 斎藤警務課長 ★電話
69 わかりました 笹岡生安課長 ★電話
84 わかりました 風間サイバー課長 ★電話
89 了解しました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
90 わかりましたよ 風間サイバー課長 ★電話
90 わかりました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
91 わかりました 関本刑事課長 ★電話
面
105 了解しました 関本刑事課長 ★電話
123 了解です 関本刑事課長 ★電話
157 了解しました 根岸少年課係員 ★電話
226 了解しました 田鶴サイバー対策課員 ★電話
292 了解です 田鶴サイバー対策課員 ★電話
これは、あまり差が出ませんでしたね。
そして、「話者別」に分けてみます。
*貝沼副署長
18 わかりました 対面
97 わかりました 対面
206 承知しました 対面
*笹岡生安課長
19 わかりました 対面
39 わかりました 対面
69 わかりました ★電話
*田鶴サイバー対策課員
42 了解しました ★電話
89 了解しました ★電話
90 わかりました ★電話
226 了解しました ★電話
292 了解です ★電話
*斎藤警務課長
45 承知しました 対面
67 了解しました ★電話
*風間サイバー課長
45 承知しております ★電話
84 わかりました ★電話
90 わかりましたよ ★電話
*関本刑事課長
61 了解しました 対面
91 わかりました ★電話
97 了解しました 対面
105 了解しました ★電話
123 了解です ★電話
*岩井管理官
99 わかりました 対面
159 了解です 対面
162 了解しました 対面
264 了解です 対面
303 了解しました 対面
*田端捜査一課長
106 わかりました 対面
*根岸少年課係員
157 了解しました ★電話
159 了解しました 対面
214 了解しました 対面
264 了解しました 対面
264 わかりました 対面
*戸高強行犯係
264 了解しました 対面
*伝令に来た捜査官
309 了解しました 対面
まあ小説なので、すべてセリフは、著者の今野敏さんが書き分けているのだけれども、その際にキャラクターごとに、使い分けをしていると思うのですね。
「副署長」と「生安(生活安全)課長」は「わかりました」が多く、下っぱの部下のほうが、「了解しました」をよく使っているようです。「岩井管理官」は「了解です」を2回、使っています。
しかし、「了解しました」が、それほど「敬意を欠いた言葉」だとは思えないのですが、いかがでしょうか?