新・ことば事情
6704「後遺症が残る2」
「平成ことば事情6655後遺症が残る」の続編です。
「後遺症が残る」という言葉は、
「『遺』と『残る』が『重複』ではないのか?」
という問題です。ついでに、
「クリスマスイブの夜」
についても、「重複かどうか」を、2月9日に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で質問しました。各社の回答は、以下の通りです。
(NHK)「後遺症が残る」「クリスマスイブの夜」は問題がある。重複表現。
(日本テレビ)「後遺症が残る」「クリスマスイブの夜」共に重複表現であると「日テレEYE」に書いてある。「イブ=前夜」「遺=残」だと。しかし、実際には使っているケースがある。「クリスマスイブの夜に残業していいのは、サンタだけ」など。原則、「×」。「後遺症が残る」→○「後遺症がある」に換える。
(テレビ朝日)「後遺症が残る」は重複語ではない。かなり出てくる。「クリスマスイブの夜」は、できれば避ける。
(TBS)「後遺症が残る」「クリスマスイブの夜」とも「重複」とハンドブックには明記しているが、特にラジオのCM原稿でスポンサーから言われたら「イブの夜はAKSAKASAKAS(赤坂サカス)にレッツゴー!」などとなっていても、そのまま読む。ディレクターに「これは『重複』だよ」と指摘して、理解してもらったら直す。
(フジテレビ)「後遺症が残る」「クリスマスイブの夜」ともハンドブックには載っていない。「後遺症が残る」は原稿検索で出て来なかった。「クリスマスイブの夜」は重複なのでダメだが、「クリスマスイブのきょう」というのは出てくる。これは直しにくい。
(テレビ東京)両方、明確な取り決めはない。原稿検索では「後遺症が残る」は「健康ネタ」を中心にたくさん出て来た。「クリスマスイブの夜」は2件。「イブにテロがあった」というものだった。
(ABC)両方、ルールはない。今後、注意する。「イブ」=「前夜」だが、欧米では、実は「24日の日没から、既にクリスマス」なので、ややこしい。最近若者の間では「イブイブ」という言葉も使われているが・・・。
(ytv)京都の祇園祭にも「宵々山」が、昔からある。
(MBS)「後遺症が残る」は、重複感が薄いので、結構出て来るし、それほど厳しく「ダメ」とは言っていない。「クリスマスイブの夜」は、アナウンサーには厳しく「重複だからダメ」と言うが、タレントさんなどには言わない。
(TVO)「後遺症が残る」は原稿で使っていた。「クリスマスイブの夜」は原稿検索では2件ぐらい。フリートークで「あしたはイブ」などは許容、使うだろう。ドイツ人と結婚した知り合いに聞くと、ドイツでは厳密に「12月24日の日没から25日にかけてイブ」で「イブの日はお休み」などと使っているそうだ。
(KTV)「後遺症が残る」は普通に使っている。原稿検索でも100件あまりあり、重複感がない。「残された遺族」「残された遺書」なども重複感がなく使う。「イブの朝」も「(クリスマス)イブの夜」も言わずもがなで、ダメ。
(時事通信)「後遺症が残る」は使っている。「クリスマスイブの夜」は出て来ないが、出て来たらチェックする。
(共同通信)「後遺症が残る」は「重複」だと、加盟社から指摘を受けたことはある。しかし、「地下鉄サリン事件」や「和歌山毒入りカレー事件」など「薬物事件」関係では、「後遺症が残る」を使わざるを得ないことがある。「遺書を残す」「遺産を残す」は使う。「クリスマスイブの夜」に関しては、「イギリスでは、12月24日そのものを『クリスマスイブ』と言う」と書かれた辞書もある。必ずしも「重複表現」とは考えていないので、「クリスマスイブの夜」も使っている。
つまり、
・「後遺症が残る」は「重複」だとして使わないとしている社は、
×「NHK・日本テレビ・TBS」
・「重複ではないので使う」という社は、
○「テレビ朝日・MBS・テレビ大阪・KTV・時事通信・共同通信」
・「特にルールはない」という社は、
△「フジテレビ・テレビ東京・ABC」
一方で、
・「クリスマスイブの夜」は「重複」だとして使わないようにしている社は、
○「NHK・日本テレビ・TBS・テレビ朝日・MBS・KTV・時事通信」
・「特にルールはない」という社は、
△「フジテレビ・テレビ東京・ABC・テレビ大阪・共同通信」
ということでした。