新・ことば事情
6700「金栗四三の読み方」
先週(2月9日)に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で、TBSの委員から出た質問です。
「大河ドラマで描かれることも決まり注目される『金栗四三』氏の読み方は、各百科事典では下記のとおり。
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』→ 「かなぐり しぞう」名字・名前共に濁る
『世界大百科事典 第2版』(平凡社) → 「かなぐり しぞう」名字・名前共に濁る
『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)→ 「かなぐり しぞう」名字・名前共に濁る
しかし、金栗氏の地元・熊本県玉名市のHPは、
「かなくり しそう」
と、名字も名前も「濁っていない」。これは、金栗氏自身が、
「『しそう』と読む」
と答えた新聞記事(1976年)などから、地元自治体が協議し、「今年1月29日」に、
「今後は、『かなくり しそう』で統一する」
となったことからきている。ただし、玉名市は、
「他の読み方を否定するものではなく、慣れた読み方で結構です」
とも話しているそうだ。これを受けて、弊社系列局である「熊本放送」から、
「去年まで『カ/ナ\クリ・シ/ゾー』と読んでいたが、今後は地元に従い『カ/ナ\クリ・シ\ソー』という読み方で統一する」
との連絡が、1月30日にあった。弊社ではその決定に倣っていくと思う。
各社の対応はいかがか?異なった読み方をされている社、各番組の判断に任せている社があったら教えてほしい。
これに対する各局からの回答は、以下の通りです。
(NHK)地元の熊本放送局に聞いたところ「今後は『カ/ナ\クリ・シ/ソー』と、名字も名前を「濁らずに」いくそうだ。民放他局は、名前のアクセントが『カ/ナ\クリ・シ\ソー』と「頭高アクセント」だか、NHKは「平板アクセント」。大河ドラマで取り上げることになったため、担当者が金栗四三の娘さんに聞いたところ、「シ/ソー」ですという答えだったと。
(日本テレビ)原稿データベースでは8件出て来たが、全て「箱根駅伝」。金栗四三氏は、「第1回箱根駅伝」の審判長だったため。これまでは「カナグリ・シゾー」と名字も名前も濁っていたが、「名前も名字も濁らない『カナクリ・シソー』だそうですよ」とスポーツの担当者に伝えたら「今後はそうする」という答えだった。
(テレビ朝日)ニュースでの使用例はなし。スポーツでも出て来ず。統一ルールはない。本人が「シ/ソー」と言っていたのならば、今後は『カ/ナ\クリ・シ/ソー』でルール化する。
(フジテレビ)ニュース原稿では出て来たことがないので分からないが、玉名市は、もともとは「カ/ナ\クリ・シ/ゾー」だったようだが、地元の3つの自治体が「シ/ソー」で統一したり、大河ドラマが「シ/ソー」なら、今後は「シ/ソー」かな。いずれ、たくさん出てくるようになれば、統一されるのではないか。
(テレビ東京)ニュースでは出て来なかったが、クイズ番組で出たことがあり、そこでは「カ/ナ\グリ・シ/ゾー」と名字も名前も濁っていた。今後は「濁らないほう」でいくと思う。
(ABC)これまでに出て来た実例はなし。この会議での結果を反映させる。
(MBS)実例なし。系列の熊本放送に従う。
(KTV)マラソン中継などもやっているが、この名前を使ったことがない。「濁らない」ということにアナウンサーなど局側が従ったとしても、解説者やゲストが「濁って」話した場合には、止められない(訂正できない)と思う。
(TVO)使用例なし。ここでの話し合いを反映させたい。
(時事通信)「金栗賞」というのがある、これは「カナクリ」と濁らず。「名前」の「四三」の読み方は分からない。
(共同通信)去年12月25日には「カナクリ・シゾー」と「名前だけ濁って」配信したが、今年1月29日に玉名市などが「カナクリ・シソー」と濁らないことを発表したことを受けて、1月30日に「シソー」という「濁らない名前」に差し替えた。
私も、調べた分の発表をしました。
(ytv)『広辞苑』は「第6版」までは載っていないが、最新(1月12日発売)の「第7版」では「カナグリ・シソウ」と「名字が濁り、名前は濁らない」で載っているが(名はシゾウとも)と「濁る名前」も載っている。系列の熊本民テレビに問い合わせたところ「忙しいので自分で調べて」と言われたが、「金栗四三の地元は、熊本県和水町(なごみまち)ですので、そちらの社会教育課に聞いてみたら?」とそのURLを教えてくれた。早速、電話して聞いてみたところ、
「町としては、『カ/ナ\クリ・シ/ソー』と名字・名前とも『濁らない』と決定しました」
とのこと。そして、町として金栗四三氏の「パスポート」も調べたところ、「カナクリ・シソー」「カナクリ・シゾー」と2通りのサインがあったとのことで、なかなか、どちらかに決めるのは難しいようだ。
ということです。今後「金栗四三」さんの読み方に注目ですね。