新・読書日記 2018_023
『隠蔽捜査7 棲月(せいげつ)』(今野敏、新潮社:2018、1、20第1刷・2018、1、30第2刷)
主人公の竜崎は、警察庁のキャリアでありながら「大森警察署長」に「左遷」させられた。普通は50歳ぐらいのキャリアで「警察署長」に左遷されるのは「嫌がらせ・いじめ」のようなもので、その時点で警察を辞めるのだそうだ。しかし、「公務員は国民のために働くものだ。上司の気持ちを忖度して生きるべきではない」という信念を基に働く竜崎には、左遷など関係ない。与えられた場所で、精いっぱい仕事に邁進するだけだ。これが「胸がすく」のですよね。会社(警察)の中での出世を気にしてコソコソ動く大多数の管理職、地位を自分の価値だと思い込んで偉そうに振る舞うエライさんを、問答無用でブッタ斬っていくところが爽快です。「忖度」する様子は、現在の政界を彷彿させますね。こういう警察官が、本当にいればいいのになあ。いるのかなあ?周りは、ちょっと迷惑かもしれませんが。
その"情け無用"で仕事をする竜崎に異動のウワサが!意外なことに「移動したくない、大森署で働き続けたい」という自らの気持ちに驚く竜崎。「人間・竜崎」の一面も見られる一冊です。
ところどころ、著者・今野敏の思いが出てきます。たとえば、
「日本のマスメディアはスキャンダルにばかり躍起になっていて、ジャーナリスティックな話題はあまり取り上げないような気がする」
結構、テレビを見てるんだな、と思いました。
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