新・ことば事情
6686「仮想通貨」
仮想通貨取引所「コインチェック」から、580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出=盗まれた事件。実は私はまだ、
「仮想通貨」
というものがどういうものなのか、よくわかりません。
そこでいろいろ考えて、思ったこと。「通貨」というものは、
「その価値が固定的」
であることで、
「共通の、交換の基準足り得る」
のである。ところが「通貨そのもの」の基準(価値)が「大幅に上下動」し、
「投機対象」
になるのであれば、それは、
「通貨たり得ない」
のではないか?つまり、
「『仮想通貨』という名称が、理解を妨げ誤解を招く原因になっているのではないか?」
と思ったのです。
「『仮想通貨』は『通貨』ではない」
のです。今、「かんさい情報ネットten.」(1月29日)で、慶應義塾大学大学院・教授の岸博幸さんが、全く同じことを言っていました。
もちろん、「外貨」=「外国のお金」に関しては変動相場制ですから、「上下動」はありますが、
「投機的」
なほどの大幅な上下動はありません。そこは「通貨」と「投機財」との違いではないでしょうかね。
「ハイリターンなもの=ハイリスク」
なのは、常識ではないでしょうか?安定した取引のための「通貨」は「ローリスク」でなければならないと思います。「仮想通貨」という名前は、やめるべきでしょう。
「仮想投機マネー」
という名前にすればどうでしょうか?
それにしても、「仮想通貨取引所」が、どうやって儲けているのかが分からない。「証券会社」のように「手数料」で儲けているのでしょうか?
「かんさい情報ネットten.」の高岡キャスターが、たまたまちょっと休憩時間で報道フロアを歩いていたので聞いてみたら、
「手数料と、あとは恐らく運用益です。」
とのこと。
「ってことは、やっぱり『通貨』じゃなくて『投機財』じゃないの?」
「そうなんです。実は法律には『通貨』とは書いてないんです、『物』なんです。だから僕はさっき放送で『土地』に例えたんですけどね。」
「そうか、それで価値が上下する、投機対象になり得るんだね」
「そうです。もし『通貨』ならば、『安定的』でないといけませんからね」
と、大体、私の理解どおりでした。
実際、法律を見てみると、「仮想通貨法」というのは「通称」で、正式には、
「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」
で、その中の「資金決済に関する法律」に、
「第三章の二 仮想通貨」
が追加され、これをいわゆる「仮想通貨法」と呼んでいるとのこと。法律・政令等の施行日は、「2017 年4 月1 日」です。一応、「仮想通貨」という言葉は、法律の中にもあるようですよ、高岡キャスター!
そして、「仮想通貨の定義」は「資金決済に関する法律 第二条 5」によると、
『この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移することができるもの」
だそうです。
難しい。でも、「通貨」という名前をやはり使うべきではないと思います。