新・ことば事情
6676「綱の遺伝子」
1月17日の「ミヤネ屋」で、昭和の大横綱「大鵬」の孫・納谷くん初勝利のニュースを、「スポーツ紙の記事」を使って紹介しました。
「1面トップ」で取り上げていたものは「東京版」、それ以外は「大阪版」だったそうですが、「日刊スポーツ」の1面(東京版)で、
「綱の遺伝子」
という見出しがありました。
「遺伝子」「DNA」
という表現は、ダメではないが「ビミョー」です。ちなみに他紙(1月17日付)は、
<ニッカンスポーツ・大阪版>「おじいさん 見てくれましたか 大鵬孫 納谷 貫禄デビュー」
<スポーツニッポン>「祖父の道 第一歩 大鵬孫 納谷 デビュー戦2秒で圧勝」
<サンケイスポーツ>「祖父 大鵬ほうふつ 孫・納谷 圧勝デビュー!!」
<スポーツ報知>「偉大なDNAそろい踏み 朝青甥・デビュー戦白星・大鵬孫」
<読売新聞>「注目ありがたい」大鵬の孫 初戦○
「遺伝子」「DNA」は、実は「血筋」「血統」「サラブレッド」などの言い換えとして使われています。
「血筋」「血統」が、なぜ放送などでダメなのか?
まず「日本国憲法第14条(法の下の平等)」の、
「すべての国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない」
に反するという考えです。この中の「門地」ですね。意味はズバリ、
「家柄」
です。
「良い家柄をほめて、何でダメなの?」
と思いますが、「良い家柄」を認めるということは同時に「悪い家柄」も認めることにつながるのですね。つまり
「個人の努力によって変えられるものではない」
ということを公に肯定してしまうことは「差別につながる」という考え方です。
使わなくて済むなら、使いたくない表現です。
そう思っていたら、最新の『週刊文春』1月25日号で、
「貴景勝 貴乃花部屋の最強DNA 父が語る"ガチンコ一直線"」
という見出しの記事が載っていました。
「最強DNA」
で使われていました。流れとしては「使う傾向」がありますね。
「ミヤネ屋」で、その翌日に、「最強DNA」が出て来ました・・・うーん、仕方がないか。使うか。でも、ダイレクトではなく「いわゆる」の感じを出すために、
「"最強DNA"」
というように「" "」を付けました。
その後、1月25日の産経新聞・夕刊に(関西は、「夕刊」があるんです、「産気新聞」。関東はないけど)、
「納谷 貫禄の初土俵3勝」
という見出し。サブタイトルには、
「祖父・大鵬 遺影に『春場所は序の口』報告」
とありました。そして記事本記には、
「『昭和の大横綱』の遺伝子を受け継ぐ大器が、貫禄の船出を果たした。」
と、元横綱大鵬の孫「納谷(なや)(17)」(本名・納谷幸之助、東京都出身、大嶽部屋)を紹介していました。見出しには取らないで「本文」で、
「遺伝子」
を使っていました。