Top

『道浦TIME』

新・ことば事情

6674「入水自殺」

1月21日、評論家の西部邁さん(78)が亡くなりました。東京・多摩川に飛び込み、入水自殺したと報じられています。この、

「入水自殺」

ですが、

「『入水(ジュスイ)』は『水に入って自殺すること』なので『入水自殺』は重複表現だ」

という意見あります。その一方で、

「『入水(ジュスイ)』と聞いてもすぐには意味がわからないので、『自殺』ということを強調するために『自殺』を付けている。しかし『ジュスイ』と読むと『重複する感じ』があるから『ニュースイジサツ』と読むべきだ」

という意見もあります。しかし、「ニュースイ」と読んだら、

「それは『ジュスイ』と読むんだ。最近の若いアナウンサーは、そんなことも知らないのか!勉強不足だ!!」

とお叱りを受けそうです。

私も委員の一人である、日本新聞協会の新聞用語懇談会放送分科会が編纂した『放送で気になる言葉2011』にも、この言葉は載っていて、このように記されています。

*「入水自殺」=「入水(ジュスイ)」は「水中に身を投げて自殺する」ことで、「入水自殺(ジュスイジサツ)」は重複表現で明らかな間違い。一方、単に水に入ること、飛び込み競技で水に入る、という意味で「入水(ニュースイ)」という言い方があり、その延長に「入水自殺(ニュースイジサツ)」という言葉も存在する。読み、意味ともに誤解を招きやすいので、放送では「川へ飛び込んで自殺(心中)しました」などへの言い換えが望ましい。

と書かれていて、これ以上でもこれ以下でもないなあと思います。

ただ、見出しでは、

「西部邁さん入水」

だけでは分かりにくいので、

「西部邁さん入水自殺」

となってしまうのも、仕方がないのかなあという気がします。

覚悟の自殺だったのでしょうね。なんか、三島由紀夫の割腹自殺を連想してしまいました。合掌。

(追記)

1月25日の毎日新聞夕刊に、鈴木英生記者による「追悼記事」が出ました。そこでは、

「保守派の評論家で社会経済学者、西部邁さん(78)が21日、東京都大田区の多摩川で入水し亡くなった。」

と、シンプルな「入水」を使っています。ルビは降ってありませんが、これはもちろん、

「ジュスイ」

と読ませたいのでしょう。

(2018、1、25)


(2018、1、25)

2018年1月26日 13:32 | コメント (0)