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『道浦TIME』

新・ことば事情

6673「顕性・潜性」

平成ことば事情6673「顕性・潜性」

去年(2017年)9月に「日本遺伝学会」が、遺伝子に優劣があるとの誤解を避けるため、長年使ってきた、

「優性」や「劣性」

の用語を使わず、今後は

「優性」⇒「顕性」

「劣性」⇒「潜性」(せんせい)

と言い換えることを決めました。

(ちなみに「突然変異」も、原語に「突然」という意味は含まれていないため「突然」を除いて「変異」とし、「色覚異常」や「色弱」も、「色覚多様性」と変更するとのことです。)

去年(2017年)11月に岡山で開かれた「新聞用語懇談会秋季合同総会」で、テレビ朝日の委員から、各社の対応に関して質問が出ました。各社の対応は以下の通りです。

(朝日新聞)今のところ変更なし。2017年9月以降「優勢・劣勢」などは出て来ていない。

(毎日新聞)直近の変更予定なし。今後は「教科書」の表記がどうなるかを鑑みて対応する。ただ「劣性遺伝」を「劣った遺伝」であるという"間違った理解"はしないようにしている。

(読売新聞)高校の「生物」の教科書は「日本学術会議」の表記に従っているが、今のところ「優性・劣性」と「顕性・潜性」を併記している。定着するかどうか見守りたい。

(日経新聞)対応は決めていない。今後考えていきたい。

(東京新聞)対応は未定。

(産経新聞)決めていない。「日本遺伝学会」の発表の記事は読んだ。そのように報道した。

(共同通信)表記は変えていない。「優性・劣性」は、ほとんど使っていない。今後、学会と文科省の協議や教科書などを見て対応を考えたい。

(時事通信)ただちに変更することはない。

(NHK)変更の予定なし。9月に日本遺伝子学会で出て来たばかりの言葉なので、世の中への定着度を見て検討したい。

(日本テレビ)「優性・劣性」から「顕性・潜性」への用語変更は、状況を見て。まだ従来の「優性・劣性」を使っている。

(フジテレビ)これまでと変更なし。

(テレビ東京)様子見。変更なし。

(MBS)(TBS欠席のためJNNを代表して、という議長からの発言に)JNNを代表していません!あくまでMBSとして。一般的に「学会」というのは「新しい表現」を広めようとする。例えば「リアス式海岸」→「リアス海岸」、「縄文式土器」→「縄文土器」、大阪・堺の「会合衆」も、昔は「えごうしゅう」と言っていたが、最近は「かいごうしゅう」と言うらしい。(※「会会衆」=室町・戦国時代の都市自治組織の代表者。都市によって年寄、老中、乙名 (おとな) などと呼ばれており、堺では文明年間 (146987) に会合衆がおかれていた。堺の会合衆は納屋衆とも呼ばれた。「ブリタニカ国際大百科事典」より)こういった名称変更は、視聴者の混乱を招くのではないか。

(ytv)こういった名称変更の過去の例を見てみると、最初は「聞き慣れない」ということで反発があるが、経験的に大体「2年」で定着する。「文部省」→「文部科学省」、「大蔵省」→「財務省」、「建設省+運輸省」→「国土交通省」、「厚生省+労働省」→「厚生労働省」などの「省庁の名称変更」があった2001年1月当時は、「名前が長い」などの反発があり「『国土交通省』は略して『国交省』とでも言うのか?まるで『中国の省の名前』みたいでおかしい」などの意見が大勢だったが、今はみんな「国交省」と言っている。「病名」の場合は、新しい薬の登場などで従来の病名のイメージと実態が合わなくなった場合に、従来の病名にまとわりついた「偏見」を拭うために「病名変更」が行われることが多い。「精神分裂病」→「統合失調症」、「痴呆症」→「認知症」など。「認知症」に関しては、当時用語懇談会放送分科会としては「認知できない症状なのに『認知症』と言うと、『認知できる』ように感じ、病気の実態を表していない。『認知不全症』と呼ぶべきではないか」という意見を厚生労働省に出したが、それによって名称変更が中止されたわけではなかった。

というようなことでした。

そして2018年1月12日、10年ぶりに『広辞苑』の「第7版」が出ました。

『広辞苑・第7版』で記載はどうなっているか、見て見たところ、

「意味の説明」は、これまでの「優性」「劣性」のところに書かれていました。

しかし、「1行」ではあるが、新たに「見出し」を立てていました。

できれば「反対語」として、

「顕性⇔潜性」

「潜性⇔顕性」

としてほしかったところですね。スペースはあるのですから。

(2018、1、24)

2018年1月26日 10:30 | コメント (0)