新・読書日記 2018_007
『男尊女子』(酒井順子、集英社:2017、5、31)
タイトルが面白い。もちろん「男尊女卑」に引っかけているのだが。去年の春に出ていたが、気付かなかった。その後あちこちで「『男尊女子』面白かった!」「2017年のベスト1」などという書評などを目にしたので、酒井順子ファンとしては「これは読まねば!」と。ファンなのにこの本が出ていたのを「知らなかった」というのも「いかがなものか」と思いますが。
全20章からなるこの本。各章のタイトルは「小さな女子マネ」「お茶女子」「九州男女」「ニュートラ」「言葉の女装」「主人」「夫婦別姓」「無知のフリ」「女性議員」「レディ・ファースト」「性」「かわいい」「気が強い」戦争」「嫁」「服従」「高低」「男女」「女子」「守られる」というようなキーワードが並んでいる。
中でも私が「へーなるほど」と目から鱗だったのは、第6章の「主人」である。「夫のことを何と呼ぶか」によって、女性のタイプは分かれる、ということなのだが、その中でも「主人」と呼ぶ人は、従来だと「専業主婦」的な、「夫=主、妻=従」という『保守的な考え方の人』だと思われがちだが、最近は『バリバリのキャリア・ウーマンで、かつ家庭のこともしっかりやっているといった人』が、好んで「主人」と呼んでいると。それは、
「一種の自慢」
なのだと喝破する。というのは、
「経済力を持つ女性は、往々にしてダメな男と結婚しちゃうことがあるけど、私は夫だって『正社員』で『主人』と呼んで差し支えのない立場なんですからね」
と言いたいがために「主人」と呼ぶというのだ。うーん、複雑な・・・。
そして酒井さんは、「既婚の女性芸能人のブログ」で、「夫」のことをどう呼んでいるかを調べました。
*「主人」=西田ひかる、三浦りさ子、東尾理子、渡辺美奈代、堀ちえみ、中澤裕子、
保田圭、安めぐみ、安達裕実、安田美沙子
*「夫」=里田まい、ギャル曽根、くわばたりえ、とよた真帆
*「旦那さん/ダンナさん」=キンタロー。、絢香、相田翔子、吉澤ひとみ、小原正子、
辺見えみり、藤本美貴
*「パパ」=北斗晶、神田うの、野田聖子、アグネス・チャン
*「名前」=松本伊代(ヒロミさん)、青田典子(玉置浩二)
*「彼」=吉川ひなの
酒井さんは、それぞれのグループの特徴も記しています。「主人」と呼ぶグループは、
「結婚していること、子どもがいることなど『家族持ちであること』をセールスポイントとしている」
という分析です。そしてこれは、一般人にも当てはまり、
「仕事をしていても軸足が家族にあり、かつ『家族の一員であること』にアイデンティティーを置く人は、夫を『主人』と呼びがち。対して専業主婦でも、自立心が旺盛だったり、『家族持ちである』ということに既に飽き飽きとしていたりすると、『ダンナが』とか『夫が』とか『うちのが』といった言い方になりがちなのです」
と断じます。そして、「主人」派の友人によると、
「ママ友の間で『夫』とか言うと、なんか気取ってるムードになっちゃう。『ダンナ』じゃがらっぱちすぎる感じだしし、アメリカ人じゃないからハニーとかダーリンって言うわけにもいかないし」
ということだそうです。
・・・ご苦労様です。たしかに"傾向"はありますね。でも単に「年齢」によるという部分もあるのではないかな?という気は、少しします。
これと対応して、「これらの女性芸能人の夫」は、「妻のことを何と呼んでいるか?」も調べて並べると、面白いのではないでしょうかね?