新・ことば事情
6666「運動家と活動家の違いは?」
酒井順子さんの『男尊女子』という本を読んでいたら、市川房江さんのことが出て来ました。その彼女の説明に、
「婦人運動家」
とありました。それを見て、ある疑問が。
「『運動家』と『活動家』は、どう違うのだろうか?」
「家」は「~する人」でしょうから、問題は、
「『運動』と『活動』の違い」
ですね。あれ?これって「選挙運動」と「選挙活動」の違いにも通じる微妙な問題だな。前に書きかけて、途中で止まってるやつではないか!
それはさておき、「運動」と「活動」、それぞれ辞書を引いてみましょう。手許にある『広辞苑』の第6版、電子辞書。
*「運動」=(4)目的を達するために活動すること。(例)「選挙運動」「市民運動」「運動資金」
*「活動」=(2)はたらき動くこと。いきいきと行動すること。(例)「社会に出て活動する」「火山活動が休止する」
うーん、「運動」の方が分かりやすいな。そして「運動」の用例が、全部、
「名詞・体言」
であるのに対して「活動」のほうの用例は、2つとも、
「文章の中」
で出てくる。そのへんも、ちょっと使われ方が違うということかな。
次に「運動家」「活動家」も引いてみましょう。
*「運動家」=(2)社会運動や政治運動に取り組んでいる人。
*「活動家」=政治運動・社会運動などの活動に積極的にかかわり、行動する人。
これはちょっと見えて来たぞ。『広辞苑』の記述によると、「運動家」と「活動家」の違いは、「社会問題・政治問題」に対して、
*「取り組んでいる人」=「運動家」
*「積極的に関わって働いている人」=「活動家」
なのですね!ついでに『ジーニアス英和辞典』も引いて、英語ではどう言うのかを見てみました。
*「運動家」=campaigner , activist , adovocate
*「活動家」=activist
なるほど、どちらにも共通しているのは、
「activist」
という単語ですが、「運動家」のほうにだけあるのは、
「campaigner」「adovocate」
ですね。ここから考えると、
*「広い意味でその問題に取り組んで、世の中に広めようとしている人」=「運動家」
*「具体的に個別の問題に取り組んで、働いている人」=「活動家」
ということではないでしょうかね。いかがでしょうか?
これで次は「選挙運動」「選挙活動」に取り組めそうです。
あ、ところで私は「言葉の運動家」?「言葉の活動家」?あるいはその両方?