新・読書日記 2017_153
『核と戦争のリスク~北朝鮮・アメリカ・日本・中国 動乱の世界情勢を読む』(薮中三十二・佐藤優、朝日新書:2017、12、30)
今まさに知りたい情報を、外務省OBの2人が語り合う。
薮中さんは元・外務省事務次官、つまりトップ。それから比べると佐藤さんは下っ端だったわけだが、ロシア関係の実務ではスゴ腕。実際の外交の舞台での経験を踏まえての「世界情勢の中での日本」に関する話は、傾聴に値する。たぶん講演会とかだと、結構取られまっせ。それが「新書一冊」「760円+税」で知ることが出来るのは、お安い。
1~8章に分かれた本書は、まず第1章が、今一番注目の「北朝鮮とアメリカ~今そこにある戦争の危機」、そして第2章「日本の上空を北朝鮮のミサイルが飛んだ日」。これは「大陸間弾道ミサイル」が日本の「上空」を飛んだと言っても、「遥か上空」は「宇宙空間」なので、国際法上「日本の『領空』ではない」ということだ。それを外務大臣も分かっていないのか、分かっていてとぼけているのか、とにかくおかしいというような話があり、「やっぱり」と思った。
また、きのう(1月11日)、中国のものと思われる潜水艦が「潜水したまま」接続水域を航行したニュースが流れたが、この本では「領空・領海」に関しても記述があり、「空」はどんな状態でも勝手に入ってはならないが、「海」は原則単なる通行(航行)であれば通っても良いのだと。しかし、「潜水艦」の場合は「浮上して国旗を掲げなくてはならない」。「潜水したまま」での航行はダメという「国際法」に関する記述もあって、
「あ、これだな!」
と思い当たった。
第3章「北朝鮮の核容認論と日本の核武装論」、北朝鮮が本当に「やぶれかぶれ」になるのはいつか?など。
第4章では、少し時計の針を戻して(15年ほど)「拉致被害者問題」。「小泉訪朝と6者協議~あのとき何が起きていたのか」。実際に実務に当たっていた方の話は、貴重だ。
第5章「北朝鮮の真相~リーダーの頭の中、民衆の本音」。
第6章「変貌する中国との付き合い方」。まさに、きのう・きょうの出来事の参考になる。
第7章「海洋をめぐる戦い~尖閣問題と東シナ海」。これも、中国の「海洋支配」に関する考え方と、その対応について考える上で参考に。
そして第8章「二つの顔を使い分けるしたたかさ」。
示唆に富む話、ほぼ全ページの端を折り曲げてしまいました。