新・ことば事情
6640「市川海老蔵に、ござりまする」
1月8日に放送された日本テレビ『市川海老蔵に、ござりまする2018』。
妻・麻央さんが去年亡くなって、その後の海老蔵さん家族のドキュメントです。
お正月恒例の番組になっていますが、海老蔵さん密着が始まった当初は、まさかこんな結末が待っているとは、誰も思わなかったことでしょう・・・。
さて、この番組のタイトルの、
「に」
ですが、普通は、
「で」
なのではないか?なぜ「に」なのか?が気になりました。つまり、普通は、
『市川海老蔵で、ござりまする』
ではないかと。ちょっと考えて気付いたことは、「に」である理由は、元の形が、
「なり」
だから。つまり、
「市川海蔵なり」
の「『なり』の連用形」が「に」なのでしょう。
もしこれが「に」ではなく「で」ならば、元の形は、
「市川海老蔵だ」「市川海老蔵です」
なのでしょう。それだと、
「市川海老蔵で、ござりまする」
になるのでしょうね。つまり「断定の助動詞」が、
・「文語」=「なり」、連用形「に」
・「口語」=「だ」「です」、連用形「で」
ということなのでしょう。
そもそも「口語」であれば、「ござりまする」も「イ音便」になって、
「ございます」
でございますから、全体は、
「市川海老蔵で、ございます」
という何の変哲もない現代文での自己紹介になりますが、「文語調」にすることで、
「歌舞伎らしさ」
が出ますね。「に」の方が、格式が高いように(私は)感じるのは、
「伝統的な言葉遣いだから」
でしょうね。今は、普通には使わないと。いかがでしょうか?