新・ことば事情
6629「あられる」
大相撲の一連の報道の中で、冬巡業で訪れた鹿児島で、街頭インタビューをしていました。その中で、地元の人が「貴乃花親方」についてのインタビューに答えて、こう言っているのを耳にしました。
「人気のあられる親方だから」
この、
「あられる」
という言葉は、おそらく、
「『ある』の尊敬語」
ですよね?「おられる」の「ある」バージョンでしょうか。
戦前、天皇陛下などに対して、
「あらせられる」
と言っていたのを聞いたことがありますが。それよりは「一段下」の敬意表現かな。
「ある」「おる」
で思い出すのは、村上春樹の今年出た小説『騎士団長殺し』に出て来る「騎士団長」のおかしな口調、
「あらない」
です。あきらかにおかしいのですが、これが大阪弁だと、
「あらへん」
という言葉があります。「ない」という意味です。これは、
「標準語の打消しの語尾『ない』」
を、
「打消しの大阪弁の語尾『へん』」
に、置き換えただけなので、あながち「おかしい!」とも言えない気が、
「せえへんこともあらへん」
のです。