新・ことば事情
6605「ウィドウメーカー、黒い未亡人、白い未亡人」
11月6日の関西地区新聞用語懇談会で、「オスプレイ」の異名である、
「未亡人製造機」
を使うかどうか?というテーマについて話し合いました。
「オスプレイ」は、開発段階の墜落事故で30人の死者を出し、アメリカでは、
「未亡人製造機(ウイドウメーカー)」
と呼ばれました。「未亡人」という言葉は、もともと、
「夫と共に死ぬべきなのに、まだ生きている人」
という意味なので、朝日新聞では、
「戦争未亡人」
のような「歴史的用語」を除いて、原則使わないことにしているそうです。2010年に2度検討して、使わないことになったといいます。
「2012年秋の関西地区新聞用語懇談会」でこの件について話し合いましたが、その際に、「使う」としていた社(=毎日新聞・産経新聞・ABC)は、その後どうなっているか?という質問が出ました。
ちなみに「2012年秋の関西地区用語懇談会」では、「オスプレイの別名(未亡人製造機)」について幹事社の朝日新聞から使用状況についてのアンケートが各社に配られ、その回答の発表と意見交換という形でした。
回答した社は全国紙5社、スポーツ紙4社、通信社2社、テレビ局5社、ラジオ局1社、地方新聞社8社の、合計25社。( )内はテレビ局の数、★=ytvの回答。
(使う)(規定あり使わない) (規定なしだが使わない)
未亡人製造機(オスプレイ) 6(2) 8(1) 11(2)★
でした。5年たった現状は、
(毎日新聞)「未亡人」は使わないとハンドブックに記載がある。「オスプレイ」の異称としても出て来ない。
(産経新聞)「未亡人製造機」は出て来ない。「未亡人」は使わない。今後「オスプレイ」の異称で出て来たら使うかも。
(ABC・A氏)「未亡人製造機」という表現は出て来ない。
(ABC・B氏)アメリカで「ウイドウメーカー」という呼び名は、現在も使われているのか?もし使われているのならば「未亡人製造機」を使わざるを得ない。私は長年、制作現場でやって来たが、以前は「悪役プロレスラー」の異名として「ウイドウメーカー」と、よく言われた。
(毎日新聞)「寡婦」ではダメか?
(朝日新聞)難しいのでは?
(TV各局)音で聞いて分かりにくい。
(朝日新聞)「未亡人」に関しては3~4年前に「読者の声」の欄に「"未亡人"と呼んでほしい」という71歳女性の電話での意見があった。「年下の彼氏と付き合っているが、彼が友人から『"後家さん"と付き合ってんのか』と言われた。せめて"未亡人"と呼んでほしい」と。(たしかに「未亡人」は、「貴婦人」のようなイメージがあるような・・・)しかし実際は「戦争未亡人」で使うか、文学作品ぐらいでしか「未亡人」は出て来ない。
(共同通信)基本的には「未亡人」は使わないが、テロリストで「白い未亡人」「黒い未亡人」というのが出て来た。また「皇室典範」では、「皇太后」のことを指した表現で「未亡人」が出て来る。
(ytv)「未亡人」という「日本語」ではなく、外来語の「ウイドウ」なら使ってもよいのか?その昔の流行語で「ゴルフ・ウイドウ」(旦那さんがゴルフに行ってばっかりで、家に一人残された奥さんのこと)というのがあったし、山口百恵の曲は「ロックンロール・ウイドウ」。フランツ・レハール作曲の有名なオペレッタには「メリー・ウイドウ」がある。
(朝日新聞)「未亡人」の意味を気にしない読者も多いが、できれば避けたい表現だ。
その中で、共同通信の委員の発言で出て来た
「黒い未亡人」「白い未亡人」
について、不勉強で意味が分かりませんでした。会議から帰ってから調べて見ると、こんな感じでした。
*「黒い未亡人」=チェチェン紛争により家族を失った女性たちで組織された過激派組織
*「白い未亡人」=(1)イギリス人、サリー・ジョーンズ。ISへの勧誘をしていた。10月の産経新聞記事で、ドローン攻撃で死亡したと。
(2)サマンサ・ルスウェルト29歳。ソラリアのイスラム過激派組織、アル・シャバブへの勧誘をしていたイギリス人女性。
全然、知りませんでした。勉強になりました!
「ウィドウメーカー」については、たまたま『週刊文春』2017年10月5日号で、評論家の宮崎哲弥さんがコラム「宮崎哲弥の時々砲弾」(あ、これは「ときどきほうだん」ではなくて「じじほうだん」、つまり「時事放談」のダジャレか!連載270回目の今回初めて気付いた・・・。)で取り上げていました。
ここで取り上げた「ウィドウメーカー」は「オスプレイ」のことではなく、「トレーダー」の間では、
「日本国債の空売り」
のことを指して呼ぶらしいです。
「直訳すれば未亡人製造機。比喩的に事故率の著しく高い軍用機などをこう称する。国債空売りポジションが死屍累々であることを暗に示す」
と記されていました。
「危ない」
ということですね。