新・ことば事情
6600「東大寺?」
中1の娘と一緒に、おじいちゃん・おばあちゃんの家(実家)で夕食を摂らせてもらった時のこと。夕食後に「おやつ」として
「水色の金平糖」
が出て来ました。それが、
「螺鈿(らでん)と漆の棗(なつめ)」
の中に入っていたのです。我が家には絶対にないような仕様の物でした。そもそも「棗(なつめ)」なんて、ないもんね。それはまるで、
「正倉院の宝物」
のような、と言うと言い過ぎですが、なかなか美しい器でした。そこで娘に、
「これはな、おじいちゃんが『正倉院』から盗んで来たんやで」
と冗談を言うと、口の中に金平糖をほおばった娘が、
「東大寺」
と言ったように聞えました。アクセントは、
「ト/ーダ\イジ」
です。
「お!ちょっとは、わかっとるやないか。でも『東大寺』ではなく『正倉院』やからね、宝物は。」
と言うと、
「ちがふ!ほーだあじ」
と言った後に、金平糖を呑み込むと、こう言い直しました。
「ソーダ味!」
つまり彼女は、"金平糖の味"についてしゃべっていたのでした。父の話など、何にも聞いていなかったのでした・・・。