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『道浦TIME』

新・読書日記 2017_151

『生きていくあなたへ~105歳どうしても遺したかった言葉』(日野原重明、幻冬舎:2017、9、30第1刷・2017、11、30第7刷)

「2017読書日記148」に書いた、養老先生の『遺言』という本は、養老先生の、

「まだまだ、生きるぞ!」

という「宣言の書」だったが、こちらは正真正銘「遺言」です。

ことし7月18日に105歳で亡くなった聖路加病院の日野原重明先生に、ことし1月、1か月間にわたってインタビューしたもの。最後が1月31日。いろんなお話が聞けます。例えば、「よど号」がハイジャックされた際、その飛行機に乗り合わせていた日野原先生。ハイジャック犯が「我々はこの飛行機をハイジャックした」と言った時に乗客の一人が、

「ところで、ハイジャックって何ですか?」

と聞いたそうです。乗客の誰もが「ハイジャック」とい言葉をそのとき初めて耳にしたに違いない、と。その時に犯人もその質問にうまく答えられなかった。そこで日野原先生が、

「ハイジャック犯がハイジャックを知らないとはいかがなものか」

と言ったら、機内中が大笑いだったそうです。(よく、殺されなかったものだ!)

その飛行機を降りる時には犯人に向かって、

「これから頑張れよ」

と声を掛けた人もいたと言うのです!本当かなあ。

また、犯人が北朝鮮の平壌へ行くように要求して、朝鮮海峡上空を飛んでいるときに、

「平壌までは時間があるから、読み物を貸す」

と犯人の一人が言い、赤軍機関紙と金日成や親鸞の伝記、伊東静雄の詩集、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」などを貸してくれたので、日野原先生は「カラマーゾフの兄弟」を借りて読んだというのです。へえー。なんか、ハイジャックにしては余裕だなあ。時代が違うんだなあ。

日野原先生には10年前にインタビューさせて頂きました。その時に、

「僕はね、100歳までは死ねないんだ。スケジュールがいっぱい詰まっているからね」

とおっしゃっていたのを思い出します。100歳以降も、スケジュールはいっぱい詰まっていたのでしょうね。

その日野原先生の『座右の銘』は、

「キープオンゴーイング」

つまり「前進し続けよう」だそうです。あちらの世界でも「キープオンゴーイング」なんでしょうね。あちらの世界でのスケジュールも、おそらくパンパンに詰まっていることでしょう。安らかに。合掌。


star4

(2017、12、18読了)

2017年12月24日 18:22 | コメント (0)