新・ことば事情
6587「背乗り」
「2017読書日記131」で紹介した竹内明(めい)さんの小説、
『スリーパー 浸透工作員~警視庁公安部外事二課(ソトニ)』(講談社)の中に出て来た言葉で、私が知らなかった言葉の一つに、
「背乗り」
がありました。これは、
「ハイノリ」
と読むそうです。意味は、
「日本人の戸籍を盗んで、その人に成りすますこと」
のようです。
手元にある国語辞典では、『広辞苑』『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『三省堂国語辞典』『新潮現代国語辞典』『現代国語例解辞典』、それに『岩波国語辞典』には「背乗り」は載っていませんでした。
ウィキペディアでは、
「背乗り(はいのり)とは、工作員など他国人が現地人に成りすますために身分・戸籍を乗っ取る行為を指す警察用語。」
「警察用語」なのか!
『スリーパー 浸透工作員』の中の説明によると、
「工作員が背乗りする日本人の身分は、偵察総局にやる厳重な審査のうえ、複数の候補から選択される。捜索願が出されることのない、天涯孤独の日本人で、北朝鮮に拉致された者、もしくは工作員によって殺害された者の身分が選ばれる。したがって、本物を名乗る者が現れることなど、共和国の工作史上あり得なかった。」(240ページ)
ということで、
「倉本雅恵背乗り事件が絡んでいるのではありませんか?」(218ページ)
などとも出て来ました。「拉致問題」の根底には、北朝鮮のこういった「工作」が絡んでいるのは間違いないでしょう。ただ、ネットで検索すると、どうも「陰謀説」がらみで出て来るものが多いのですが・・・。しかし、先日の秋田・由利本荘市に「北朝鮮籍」と思われる木造船で"漁師"が漂着した、というニュースを見ると、
「報道されないけれど、このほかにも漂着している船もあるのだろうな」
と、容易に想像できますね。