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『道浦TIME』

新・読書日記 2017_135

『学生を戦地へ送るには~田辺元「悪魔の京大講義」を読む』(佐藤優、新潮社:2017、7、30)

戦前、「田辺元(たなべ・はじめ)」(1885―1962)という京都大学の教授がいた。

京大の西田幾多郎が、東北大学に務めていた田辺を呼び寄せた。その田辺が行った講義の記録がある。それを、佐藤優が「チューター」(指導者・先生)になって、2015年6月12日の夜から14日昼にかけて箱根・千石原で行った「講座合宿」で読んでいった様子を記録した一冊。つまりその「講座合宿」に行かなくても、これを読むことで佐藤優の講義を「追体験」できるのですね。「講座合宿」にわざわざ出席された(もちろん有料でしょう、結構な額の)方々も、大変、意欲と知識・教養のある方ばかりだと思いますが、勉強になる一冊ですね。講義録だから「話し言葉」でわかりやすいし。「佐藤優」と「田辺元」を一冊で味わえる、1粒で2度おいしい。いや、1冊で2度おいしい。

この田辺元の講義は、京大生たちを戦地へ送り込んだと言われていることから「悪魔の講義」とも呼ばれるそうだ。知識のある京都帝大の学生たちが、"自ら進んで"戦地へ行きその若き命を散らした。どうしたら、そんなことになってしまうのか?それを学ぶことで、もし同じようなこと起きた時に、つまり「第二の田辺元」が現代に出現した時に、騙されないようにしないといけない。それが本講義&本書の目的ですね。

この本の「まえがき」がコワイ。少し長いが、引用する。

「時代が嫌な方向に動いている。特にドナルド・トランプ氏が米国大統領に就任したことによって、この傾向が加速している。トランプ大統領がハンドリングを誤れば(誤るというよりも、米国の国益にとって必要と考え乱暴な選択をすると表現した方が正しいのかもしれない)、中東や朝鮮半島で戦争が勃発しかねない。米国と北朝鮮の間で武力紛争が起きれば、日本もそれに巻き込まれる。さらにシリアとイラクにおいて、イラン、ロシア、米国などの軍事介入によってイスラム教スンナ派過激派『イスラム国』(IS)が近未来に解体されることになる。その結果、シリアとイラクの一部領域を実効支配していたISという事実上の国家はなくなる。それと同時に、ISの戦闘員が世界規模で拡散し、『第2イスラム国』を建設する策動を強めるであろう」(下線は道浦)

これを読み終わって数日後に、なんとこんなニュースが流れた。

「イラクのアバディ首相は(11月)17日、過激派組織『イスラム国』が支配していたイラク最後の町を奪還したと発表した。これにより、『イスラム国』はイラク国内から、ほぼ一掃されたことになる。」

佐藤さん、この本は「予言」の書?7月に出ているのに4か月後を予言?これから世界中に「ISの戦闘員」が、まるでウイルスのように撒かれるというのか・・・。1か所にまとまっていてくれた方が、まだマシだったのか・・・・?


star4

(2017、11、7読了)

2017年11月23日 20:58 | コメント (0)