新・ことば事情
6553「グータッチ」
11月6日の朝刊各紙には、前日来日したアメリカのトランプ大統領が、安倍首相とゴルフをしている写真が掲載されました。二人が仲良く、
「拳を握りしめてタッチ」
をしている写真です。その写真のキャプションに「読売新聞」と「朝日新聞」は、
「グータッチ」
という言葉を使っていました。これは辞書に載っている言葉かな?と思って、新しい言葉をいち早く載せることで有名な『三省堂国語辞典』を引いてみましたが、載っていませんでした。
そこで、ちょうどその日に開かれた「関西地区新聞用語懇談会」という会議で、質問してみました。
「けさの朝刊1面を見ていたら、きのうゴルフをした安倍首相とトランプ米大統領が、拳を突き合わせる写真のキャプションに、読売新聞と朝日新聞が『グータッチ』という言葉を使っていましたが、新しい言葉をいち早く載せることで知られる『三省堂国語辞典』をはじめとした国語辞典には載っていない言葉でした。『グー』は日本語、『タッチ』は英語ということで、『グータッチ』は『和製英語』でしょう。『グー』の手をしたドラえもんの握手を『ドラえもん握手』と呼ぶこともありますが、いずれも俗語で、全国紙の1面に出て来るとは思えない言葉ですが、これはもう『1面に載る言葉』として認識されているのでしょうか?」
これに対する回答ですが、
(朝日新聞)・・・・・。
(読売新聞)キャプションはともかく、3面の記事本文でも使ってしまったのは、ちょっと・・・。
という感じでした。これに関して「スポーツ紙」の用語担当者が、
(スポニチ)これは、巨人の原辰徳氏が監督時代にやり出して広まったもの。スポーツ紙ではバンバン出て来る。「ハイタッチ」だと、突き指をしたり、ケガをしがちなので「グー」にしたと聞いている。
と教えてくれました。そういえば、原監督、やっていたな!ちょっと思い出した。追加で聞いてみました。
(ytv)日米両首脳は「片手で」タッチしているが、「片手で」やるものなのか?
(スポニチ)原・元監督の「グータッチ」は「両手で」やるものだ。
とのことでした。『三省堂国語辞典』は、次の改訂で「グータッチ」を載せますかね?それと来年1月に出る『広辞苑』の「第七版」にも載っているか、注目したいと思います。