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『道浦TIME』

新・ことば事情

6524「日本死ね」

<2016年12月13日に書き始めてました。メモのような感じで>

「保育園落ちた 日本死ね!」

が、今年(2016年)の「ユーキャン新語・流行語大賞のトップ10」に選ばれました。

2016年2月15日に書き込まれたこの言葉を発した匿名のお母さんの書き込みを基に当時、民主党の山尾志桜里議員が、国会で安倍首相に「待機児童対策」の充実を迫って追及したことで、有名になりました。その「匿名のお母さんの書き込み」をここに転載しておきます。

「何なんだよ日本。

一億総活躍社会じゃねーのかよ。

昨日見事に保育園落ちたわ。

どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか。

子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに日本は何が不満なんだ?

何が少子化だよクソ。

子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからwって言ってて子供産むやつなんかいねーよ。

不倫してもいいし賄賂受け取るのもどうでもいいから保育園増やせよ。

オリンピックで何百億円無駄に使ってんだよ。

エンブレムとかどうでもいいから保育園作れよ。

有名なデザイナーに払う金あるなら保育園作れよ。

どうすんだよ会社やめなくちゃならねーだろ。

ふざけんな日本。

保育園増やせないなら児童手当20万にしろよ。

保育園も増やせないし児童手当も数千円しか払えないけど少子化なんとかしたいんだよねーってそんなムシのいい話あるかよボケ。

国が子供産ませないでどうすんだよ。

金があれば子供産むってやつがゴマンといるんだから取り敢えず金出すか子供にかかる費用全てを無償にしろよ。

不倫したり賄賂受け取ったりウチワ作ってるやつ見繕って国会議員を半分位クビにすりゃ財源作れるだろ。

まじいい加減にしろ日本。」

という過激なもので、主張はまともなんだけれども、その文の「今風の若者の語調」に「品がない感じ」がして私はあまり好きになれず、当時は取り上げませんでした。

しかし「ユーキャン新語・流行語大賞」の審査員を務めた歌人の俵万智さんが、「選考理由」を公式ツイッターで、以下のように明かしました。

「『死ね』が、いい言葉だなんて私も思わない。でも、その毒が、ハチの一刺しのように効いて、待機児童問題の深刻さを投げかけた。世の中を動かした。そこには言葉の力がありました。お母さんが、こんな言葉を遣わなくていい社会になってほしいし、日本という国も日本語も、心から愛しています。」(2016年12月10日)

なるほど、そういう見方もありますか。

実は私は先日、こんな「戦後すぐの頃の言葉」である、

「朕はたらふく食っておるぞ、汝臣民、飢えて死ね」

に接して、

「あ、なんだ、『日本死ね』のような『死ね』が流行語になるのは、何もツイッターなどのSNSの発達した現代の若者だけでなくても、昔からあったんだ!」

と気付かされました。つまり「日本死ね」は、元をたどれば「汝臣民、飢えて死ね」と同じく、

「インパクトある抗議の言葉」

なのではないか?と。

「ウィキペディア」によると、「汝臣民、飢えて死ね」という言葉が有名になったのは「プラカード事件」と呼ばれるもので、

「昭和21年(1946年)5月19日」の、

「食糧メーデー(=「米よこせメーデー」、正式には「飯米獲得人民大会」)

の際に参加者の一人が掲げたプラカードに書かれた、

「ヒロヒト 詔書 曰ク 国体はゴジされたぞ 朕はタラフク食ってるぞ ナンジ人民 飢えて死ね ギョメイギョジ」

です。このプラカードが「不敬罪」に問われたのですが、第一審では「不敬罪」を認めず、天皇個人に対する「名誉毀損罪」のみが認められ、控訴審において「不敬罪」の成立可能性の認定は引き継がれるも、「大赦」を理由に「免訴」。最高裁の上告審も、無罪判決を求める「被告人の上告を棄却」して、結果的に被告人は「不処罰」となっています。

この「日本死ね」という言葉を取り上げた山尾志桜里さん、ご存じのようにその後、紆余曲折あって、先日(10月22日)の衆議院選挙では。愛知7区から「無所属で」出馬して、当選を果たしましたね。

(2017、10、24)

2017年10月25日 10:21 | コメント (0)