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『道浦TIME』

新・読書日記 2017_127

『逆襲される文明~日本人へⅣ』(塩野七生、文春新書:2017、9、20)

月刊『文藝春秋』の2013年11月号~2017年9月号までの「巻頭コラム」を集めたもの。まとめて読めるのはうれしい。その分少しタイムリーさには欠けるが、タイムリーなだけだったら新聞やインターネット・ツイッターで見れば良い。大体「ローマ人の歴史」を書いている人ですよ。数年の差なんて、誤差のようなものでしょ。そういった、ながーーーーーい「時の流れの中」で、「歴史の中」で「現代」を見つめるためには、毎月コラムを読むのもいいけど、こうやって新書にまとまったものを読むほうが良いと思う。

当時30代(39歳)でイタリアの首相の座に就いた、マッテオ・レンツイ首相への期待の寄せ方や分析など、辞めるまでの期間をカバーしているんで、よく分かる。二院制を、事実上の一院制に変えるための憲法改正の可否を問う国民投票で、イタリア国民は「NO」と答えたために、レンツィ首相は辞任することになった。緊縮財政一本槍から、成長路線へと方針転換したが、それによって組合員の職場の保持しか頭にない「中高年の牙城」と化した「既成労働組合」を敵に回してしまう。

塩野七生いわく、

「レンツィ首相の掲げたスローガン『廃車処分』の的にされるのを恐れた中高年層の反撃は、女の嫉妬や恨みの水準ではない。廃車処分が決定的になる前にレンツィをつぶす、の一念の前には、イタリアの将来などは知ったことではないのだ」

言葉はきついが、そりゃあ、そうだろう、「ショック療法」というのは、その対象にならない人からは喝采を浴びるが、槍玉に挙げられた方は必死であるから。同じようなことが、日本でも起こっているような気がする。それでも、イタリアは続くのだ。

本書タイトルの「逆襲される文明」とサブタイトルの「日本人へ」は、「他人のふり見て、我がふり直せ」。ふだんあまり知らない文明国イタリアの情勢を、塩野さんを通じて知ることで、日本の将来を考える糧とすると。

ローマとトリノの「女性市長」の話も、興味深かった。


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(2017、10、12読了)

2017年10月23日 11:51 | コメント (0)