新・ことば事情
6517「いちいち」
(2017年9月22日に書きかけました。)
9月28日召集予定の臨時国会の冒頭での「衆議院解散」を決意したと報道された安倍首相が、国連総会へ向かう直前、東京・羽田空港で「ふた言」だけコメントしました。そのうちの一つが、
「いちいち、ご説明は差し控える」
というもの。この
「いちいち」
という言葉に付いて考えてみましょう。
パッと聞くと、「いちいち」という言葉は、
「いちいち、質問するな!」
とか、
「いちいち、うるさい」
のように、
「後ろに『マイナスイメージの言葉』がくっつく言葉」
のように思えますが、元来の意味は「いち・いち」、つまり「ひとつ・ひとつ」なので、安倍首相のこの発言も、
「いちいち、うるさいな、説明はしないよ」
という意味ではなく、
「一つ一つの説明は、あえて、この段階ではしません」
というように言ってるように思います。
しかし、そう聞こえないのは、なんでなんでしょうねえ・・・。
一応、ここで『三省堂国語辞典』を引いてみると、
*「いちいち」=(1)【名・副】ひとつひとつ。ひとりひとり。(例)「いちいちの説明ははぶく」「いちいち反論する」
(2)【副】ことごとく。みな。(例)「いちいちもっともだ」
ということで、安倍首相の言葉は、いちいち点検しなくても(=(2)の用法)、
(1)の最初の用例がピッタリですね。