Top

『道浦TIME』

新・ことば事情

6514「強制性交罪」

8月中旬に、日本テレビ報道局から連絡が来ました。

「『強制性交罪』の放送用語について」

というものです。それによると、性犯罪の厳罰化に伴いことし7月に「改正刑法」が施行され、

「いわゆる『強姦罪』などがなくなり、『強制性交罪』に統一された」

そうです。

いわゆる性交だけでなく、口腔性交や肛門性交といった性交類似行為も含まれ、男性同士等にも適用されるため、正式名称は、

「強制性交等罪」

「等」が入りますが、ニュースの放送用語では、

「強制性交罪」「強制性交の疑い」

と表記することになったそうです。

これに準じて、酒で酩酊状態にした場合などの、これまでの「準強姦」に相当するような「準強制性交等罪」

についても「等」ははずして、

「準強制性交罪」「準強制性交の疑い」

と表記するとのこと。「性的暴行」の解釈が広がったことに伴うものなので、説明する場合にも「わいせつな行為をした疑い」とは表現せず、

「性的暴行を加えた疑い」

と表現するとのことです。NNN・日本テレビ系列の読売テレビも、ニュースではそれに従って表現することになります。

*「強制性交罪(容疑)」「準強制性交罪(容疑)」=性的暴行を加えた疑い

*「強制わいせつ罪(容疑)」=「わいせつな行為をした疑い」

この件に対する各局の対応を、9月に開かれた「新聞用語懇談会放送分科会」で、以下のように質問しました。

『2017年7月に改正された刑法で性犯罪が厳罰化され、「強姦罪」などがなくなり「強制性交等罪」に統一されました。この表現について、日本テレビ(NNN系列)では「等」を取って、「強制性交罪」「準強制性交罪」とすることにしました。「等」には口腔性交や肛門性交といった「性交類似行為」が含まれますが、OA上"耳慣れない"こと、「等」が何を指すのかについて放送で説明しづらいこと、視聴者へのわかりやすさを優先することが理由です。新聞では、毎日新聞が「等」を入れている他は、おおむね省いているようです。テレビは、日本テレビのほかTBSが「等」なし、CXとEXは「等」を入れていて、分かれています。各社の対応と、その理由などをお聞かせください。』

各局からの回答は以下の通りです。

(NHK)「等」を入れている。今後、議論になるかも。

(日本テレビ)ご説明されたように「等」は入れない。

(テレビ朝日)当初は「等」が入っていたかもしれないが、7月12日に社会部から変更についてのメールが届いた。それによると「等」は「省く」。朝日新聞・共同通信と同じ。

(TBS)「等」が入るとわかりにくいので「等」は「なし」。しかし、全社的ではなく「報道局」のローカルルールかもしれない。

(フジテレビ)FNNでは「等」を入れているが「『等』は省略可」となっているので、法律名の変更の際は「等」を入れたが、そのうち「等」はなくなるのではないか。

(テレビ東京)原稿検索をしたところ、新しい法律名が出て来たのは、法律名が変わった際のニュースのみ。その際は「等」を入れていたが、今後、議論されるだろう。ただ、これまでも「強姦」は「性的暴行」などと言い換えていたので、「強制性交(等)罪」も同じように言い換えるのではないかと思う。

(時事通信)「強姦」を「強制性交」と読み換える。「等」は省いているが、理由はわからない。見出しで「性交」という文字があると違和感があるので、使わないようにという議論はあった。模索中。

(共同通信)「等」は省いている。新しい法律は「性交の類似行為を含めたところがポイントだから、『等』は入れるべきだ」という意見もあったが、「一般読者には伝わらない」という意見が強かった。社会部からは「等」を入れた原稿が上がって来たが、省いた。見出しでは「乱暴」などにしている。

そして、10月16日お昼前の『ストレイトニュース』で、読売テレビ発の全国ネットニュースでこの、

「強制性交罪」

という表現を、私は初めて画面で目にし、ナレーションで耳にしました。元民放テレビ局局員による犯罪でした。

(2017、10、16)

2017年10月16日 21:47 | コメント (0)