新・ことば事情
6510「愚直に」
自民党の安倍晋三総裁が、衆院選に向けて発した言葉の中に、
「愚直に」
というものがありましたが、本来この言葉は「プラスイメージ」で使われるものではありません。その点では、
「実直に」
とは違います。『広辞苑』を引くと、
*「愚直」=正直すぎて気のきかないこと。馬鹿正直。(例)愚直な男
*「実直」=誠実で正直なこと、りちぎ。じってい。(例)実直な人柄
とありました。
この「愚直」の使い方に関しては、2014年10月に開かれた「関西地区新聞用語懇談会」で、
「本来とは異なる意味合いで使用される言葉への対処に関するアンケート」
の結果を基に議論された際には、意見が分かれました。そこでは、
「愚直に稽古を積んだ大関」
という文章が、例文として出されました。今回の安倍総裁の使い方と同じ「本来とは異なる意味での使い方」です。それによると各社の対応は、
・「本来の意味で使う(新しい意味では使わない)」=12、5社
・「新しい意味でも使う」 = 8、5社
と、ほぼ真っ二つに割れました
< >内は、「直す場合の各社の正解」です。「0、5社」(△)というのは、その社の中で意見が割れた社です・・・って、うち(ytv)か!
具体的には、
*【本来の意味で使う(新しい意味では使わない)】(12、5社)
=毎日・産経・スポニチ・共同・時事・ABC・MBS・KTV・△YTV・福井・神戸・中国・徳島
→<地道に・きまじめに・真面目に・熱心に・黙々と・愚直なまでに>
「直す」とした社の意見としては、
「『愚直に』は自分や身内について言うのならいいが、他人へのインタビューなどでは使いにくい言葉だ。『愚直なまでに』が省略された言葉ではないか。」
というものでした。
*【新しい意味でも使う】8、5社
=朝日・読売・日経・サンスポ・日刊スポーツ・TVO・山陽・愛媛・△YTV
ということでした。