新・ことば事情
6487「アウフヘーベン」
(2017年6月21日に書き始めました)
東京・築地市場の豊洲への移転問題。2017年6月9日の小池百合子東京都知事の会見で、こんな言葉が出て来ました。
「アウフヘーベン」
なつかしい言葉ですね。大学を出てから、とんと耳にしない言葉でした。
横文字・カタカナ言葉が大好きな小池都知事、英語だけでは飽き足らず、「ドイツ語まで」使い始めましたね。
「東京都のHP」からその部分を抜き出して読んでみると、「東京新聞の榊原記者」が、
「小池都知事は『文藝春秋』7月号の中で、『築地の改修案も市場問題PTから出され、百花繚乱の様相を呈しているが、ここはアウフヘーベンすることだ』と書いているが、この『アウフヘーベン』を使った意図と、意味するところを教えて欲しい」
と聞いているんですね。
それに対して小池知事は、こう答えています。
「はい。『アウフヘーベン』というのは、一旦立ち止まって、そして、より上の次元にという、日本語で『止揚』という言葉で表現されますが、これまで安全、安心、法的、科学的、さまざまなチェックが行われてきました。専門家会議も、この11日(日曜)にもう一度、休会していた会を開きます。そして、市場問題プロジェクトチームの非常に多角的な報告書をおまとめていただいてきたということでございます。それから、『もう6000億もつぎ込んだんだから早く移れよ』という乱暴な意見もよく聞くところでございます。さまざまな調査などを見ておりますと、『豊洲も良いけれども、安全にしてからお願いね』という方が一番多いんですよね。そこの部分はまだ達成されていないというのも、これはよく知らされていない事実だと思います。ですから、そういったことを全部含めて、どう判断するかという、そのための『アウフヘーベン』が必要だということを申し上げた。」
さらに榊原記者は、
「もはや二者択一ではないということですか。」
と尋ねると、小池知事は、
「二者択一か、全体を見ながら判断しなければならないと思っております。市場のあり方戦略本部が近々開かれると考えておりますので、そういったところからまた、それをまた総合的にまとめた形での戦略本部としての考えということを聞くことになろうかと思います。」
と答えています。 【ここまでは6月21日に書きました。】
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約3か月後の9月25日に「希望の党」の立ち上げを発表し、代表となった小池百合子氏。
また久々に「アウフヘーベン」を使っていましたね。
でも、「都知事を辞めて、衆院選に出馬するんですか?」と聞かれたら、少しムッとした感じで、
「だから、出馬しないと、日本語で何度もお答えしている」
と。わざわざ、
「日本語で」
というところが「上から目線」の言葉だなと思いましたが、普段「ワイズスペンディング」だの「アウフヘーベン」だの外国語を駆使しているので、わざわざ、
「あなたたちにもよく分かるように、日本語で言ってあげたのよ」
という感じがしました。イライラしてますね、きっと。
「そんなことは、さらさらない」「そんな感情は、排除していますから」
と言われるかもしれませんが。