新・ことば事情
6474「二足のわらじ」
9月25日、東京都の「知事」と、新党『希望の党』の「代表」という「2つの仕事(役職)」を務めることになった小池百合子都知事。この状態を指して、
「二足のわらじ(をはく)」
という表現がよく出て来ます。しかし、実は「本来のこの言葉の使い方」としては、
「間違い」
なのです。本来「二足のわらじ」という言葉は、
「泥棒と警察」
のように、
「両立しにくい、相反する2種類の職業を兼ねること」
をいうのです。しかし最近は、
「単に2種類の仕事を兼ねること」
の意味でよく使われています。『精選版日本国語大辞典』によると、
「同一人が両立しにくいような職業や任務を兼ねること。特にばくち打ちが捕吏を兼ねること。」
『広辞苑』では、
「同一人が、料率しないような2種の業を兼ねること。転じて、単に二つの職業を兼ねること。略して『二足の草鞋(わらじ)』とも」
とあり、さらに注釈として、
「本来は、博徒が十手(じって)をあずかるような、仕事が相矛盾する場合をいった」
とありました。
少し前になりますが、2011年12月に開かれた「新聞用語懇談会放送分科会」で、この「二足のわらじ」について質問しました。各社からの意見は、
(NHK・共同通信)ある程度、2つの職業が離れていれば使っても良い。
(TBS)本来の意味では今はあまり使われていないので、仕方ないかなと。
(日本テレビ)相反する職業でなくてもいいが、あまり近い(似ている)職業に使うのはダメ。
(フジテレビ)多少ギャップがあって意外性がある場合に使う。「映画監督が役者も」という場合には使わない。
(テレビ東京)ある程度、本業とは違う職業でないと使わない。
(MBS)本来の意味は教えるようにしているが、意外性のある職業であればOK。
(ABC)「二足のわらじ」はOAではあまり聞かない。
(関西テレビ)「二足のわらじ」の本来の意味を初めて知った。ちょっと違う程度でもOKかと思っていた。
(テレビ大阪)どのくらい離れているか?は、その時々の判断。ただ「昼はうどん屋、夜はステーキ屋」のようなものはダメ。
(NHK)アクセントは本来、×「ニ\ソクノワラジ」→○「ニ/ソクノワラジ」。「魚を
三枚におろす」のアクセントも、×「サ\ンマイニ・オ/ロ\ス」→○「サ/ンマイニ・オ/ロ\ス」。
ということでした。
でも「平板アクセント」の「ニ/ソクノワラジ」って、聞いたことがないなあ。
この会議の後の「2015年」に発行された『NHK日本語発音アクセント新辞典』を引いてみると、
「ニ\ソクノ・ワ/ラジ」(「二足」は「頭高アクセント」)
「ニ/ソクノワラジ」(「二足」は「平板アクセント」)
の2種類が載っていました。古いNHKアクセント辞典も、その2種類が載っていました。今は「頭高アクセント」が主流ですよね。
・平成ことば事情3366「二足のわらじをはく」
・平成ことば事情3868「二足のわらじ」
・平成ことば事情4508「二足のわらじをはく2」
・平成ことば事情4861「二足のわらじ3」
もお読みください。