新・読書日記 2017_108
『風よ僕らに海の歌を』(増山実、角川春樹事務所:2017、6、8)
放送作家で作家の増山実さんの待望の3作目。増山さんは、以前「ミヤネ屋」でも構成作家をしてくれていて、今も社内で時々顔を合わせます。これまでに、2013年に『勇者たちへの伝言~いつの日か来た道』、2014年に『空の走者たち』が出ている。いずれもスポーツに絡んだ爽やかな小説。
今回は「音楽」「料理」、そして「戦争」「イタリア」「親子」。
「戦争」を除いて、どれも好きなテーマです。「ワイン」がもっと出て来ても良かったなと。
また、前2作の登場人物(バルボン、円谷)も、ちょこっと出て来るんですね。そのあたり、スピンオフ的な楽しさもあって、前の2作を読んでいると「おお!」と思います。前作の主人公が、ゲスト出演しているような感じで。
神戸が主な舞台とはいえ、外国人が主人公なので、どうしても横文字の名前や地名が多く、なかなか頭に入って来なくて苦労しましたが、100ページあたりから、それまでの出来事や人物がつながって、目の前に世界が広がっていきます。
大分、前のページに戻って読み直したりしましたが。最後まで読むと「シチリア」に行ってみたくなりました。「宝塚」にも!(こちらは、先週行きましたが。)
中で気になったのは185ページ、主人公が宝塚に開いたイタリア料理店が繁盛して、伊丹に続いて山口県の「岩国」にも支店を出すという話を、息子がしている場面。
「伊丹はまだ宝塚から近かったけど、今度は電車に乗ってずっとずっと遠くだって。」
と言う場面。恐らくこれは、
「昭和31年(1956年)」
ぐらいの会話だと思われますが、調べてみると、山陽本線の「全線電化」は、「昭和39年(1964年)」で、「姫路まで」でも「昭和35年(1960年)」なので、この会話の頃(昭和30年~31年頃)には、
「まだ「『岩国』へ『電車」は走っていない』
のではないでしょうか?つまり、
「『電車』ではなく『汽車』」
とした方が良かったのではないかなあと思いました。つい、校閲的な見方をしてしまいました。ちなみに会話をしている、主人公の息子「ジュリアーニ」は「昭和15年(1940年)生まれ」、「エリオ」は「昭和22年(1947年)生まれ」だと思われます。