新・ことば事情
6449「署名の数え方3」
「平成ことば事情6445 署名の数え方2」で、
「ミャンマーのイスラム系少数民族"ロヒンギャ"問題で、アウンサーンスーチーさんのノーベル平和賞取り消しを求める署名活動が広がっている」
ということを取り上げ、9月8日付の「毎日新聞」夕刊が、その署名の数を、
「36万5000筆以上」
と「筆」を使ったことなどについて書いたところ、さっそくこの「署名の助数詞」を使う場面が出て来ました。
9月13日の「ミヤネ屋」で、この「ロヒンギャ」の問題を取り上げることになり、担当ディレクターが、
「署名の数え方は、どうすればいいでしょうか?」
と質問して来たのです。
詳しく話を聞くと、このアウンサンスーチーさんのノーベル平和賞の取り消しを求める署名というのは、
「街頭で名前や住所を書いてもらう」
という従来の「署名」ではなく、
「ネット署名サイト」
である、
「チェンジ・ドット・オーグ」
を使ったものだというのです。毎日新聞の記事もよく読むと、そう書いてありました。そうすると、
「『筆』という助数詞の持つ『筆記具』としてのイメージ」
つまり、
「本人が自筆で書いてくれる」
ということからは、少し離れる気がします。パソコンやスマホなどで記入するのですよね。まだ「署名の助数詞」として、「筆」が完全に定着しているとは言い難いと思いますし、ここは「署名」の持つ意味が、
「それだけの人数が賛成した」
ということを示しているので、
「○人分」
という助数詞を使うように指示しました。(9月8日の「毎日新聞」の記事から、さらに署名の人数が増えて「41万人分以上」になっていました。)
あ、そうそう「日本テレビ系列」は、
「アウン・サン・スー・チー」
と「・」を「3つ入れる」ことになっています。(9月8日放送の『ニュース・ゼロ』で確認しました)
NHKも「・」なしで放送しているそうです。
ちなみに新聞は、各社表記が分かれていて、2012年4月の用語懇談会で聞いたところ、「・」を入れないのは「朝日と毎日」。他社は「・」が入ります。
(読売)「アウン・サン・スー・チー氏」
(産経)「アウン・サン・スー・チー氏」
(日経)「アウン・サン・スー・チー氏」
(共同)「アウン・サン・スー・チー氏」
(朝日)「アウンサンスーチー氏」
(毎日)「アウンサンスーチー氏」
です。毎日新聞が「・」をはずしたのは「1996年7月」と古く、その理由は、
『ビルマ語・ミャンマー人の名には、名字と名前の区別がない。この決定以前に、スーチーさんに「ビルマからの手紙」という原稿を頼んだ際、本人と通訳から、「『・』を外してほしい」という要望があり、その原稿に関しては「・」を外した。それが一般記事にも及んで「・」を外すようになった。』
とのこと。朝日新聞も「2011年1月」から外したそうです。
で、ここまで下調べをしましたが、「ロヒンギャ」の項目はこの日の放送から外れました。