新・読書日記 2017_100
『下に見る人』(酒井順子、角川文庫:2016、1、25)
おなじみ酒井順子さんのエッセイですが、テーマとして正にタイトル通り「人間の上下関係」が一本、筋として通っています。
日本では従来、儒教的な「年令による上下関係」があり、それに伴って「敬語」もある。ただ、「年令」ではなく「役割」によっての「上下関係」もあり、そこは「機能」として「敬語」を用いることで上手く世の中が回っていくと。最近、「能力主義」が欧米から入って来て(「最近」と言っても、もう数十年経つけど)、それによって従来の「上下関係」が崩れて来たことが、今の世の中の乱れにつながっているのではないか?などと書くと、まるで昨今の「ウヨ」系の人みたいですが、まあ、少し真実も含まれているのではないかな。そして「(相手を)下に見る=上から目線」であるから、その「上から目線」に対する反発が世の中に満ち溢れているのも、「なんだかな・・・」という感じがしますね。
酒井さんは「『先に生まれた方がエラい』にしておいた方が、『能力が高いほうがエラい』よりも、ストレスが少ないのではないかな」などと書かれています。
これまでの人生において、他人を「下に見て来た」酒井さんが、悔い改めたことを確認するの「懺悔の書」でもありますね。
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