先日、「大阪と構想」の区割りの形が、南北に長い地域があるというニュースを放送していました。その際に、黒木千晶アナウンサーが、
「長細い」
という言葉を、
「ナガホソイ」
と「濁らず」に「清音」で読んでいたので、
「それは『ナガボソイ』と『濁る』に決まっているだろう!」
と思って『NHKアクセント辞典』を引いてみたところ、なんと「清音」の、
「ナガホソイ」
しか載っていませんでした!
黒木アナウンサー(神奈川・横浜出身)に聞いてみたところ、
「私も『ナガボソイ』と『濁る』と思っていたのですが、お昼のニュースで虎谷アナウンサーが『ナガホソイ』と濁らずに読んでいたので、アクセント辞典を引いたら、『清音』しか載っていなかったので、濁らずに読みました。」
とのこと。
これはもしかしたら、「地域差」があるのではないか?と思って、知り合いのアナウンサー・元アナウンサーなど言葉の感覚の鋭い皆さんにメールで質問をしたところ、たくさん返事が返って来ました。質問文は、以下の通りです。
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さて、今回は、
「長細い」
の読み方についてお伺いします。「ニュース原稿」に出て来た場合に、どう読みますか?
(1)ナガホソイ(清音)
(2)ナガボソイ(濁音)
(3)ナガッポソイ(促音)
つまり「細い」を「ホソイ」と「清音」で濁らないか?「ボソイ」と濁音=濁るか?はたまた「~ッポソイ」と促音になるか?という問題です。
私は(2)の「ナガボソイ」しか思い浮かばなかったのですが、『NHK日本語発音アクセント新辞典』には、
(1)ナガホソイ(清音)
しか載っていないのです。また「国語辞典」もいくつか引きましたが(見出しが載っていないものも多かったのですが)、私が見た範囲で載っていたものは、全部(1)「ナガホソイ」(清音)でした。
ただ『三省堂国語辞典』は、見出しは(1)「ナガホソイ」(清音)でしたが、語彙説明の中に(2)「ナガボソイ」(濁音)も載っていました。
読売テレビアナウンス部内で聞いたところ、圧倒的に(2)ナガボソイ(濁音)が多かったです。
「ミヤネ屋」のスタッフにも何人か聞いたところ、「福岡県出身」の2人が、(1)「ナガホソイ」と「清音」で答えた以外は、(2)ナガボソイ」(濁音)でした。
皆さまはいかがでしょうか?
お返事お待ちしています!!
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そして、返って来たメールは以下の通りです。
(1)ナガホソイ派(清音)=13人
*O氏(ytv・神奈川出身)
私は、(1)「ナガホソイ」と迷いなく読みます。逆に、(2)の「ナガボソイ」は全く浮かびませんでした。(3)「ナガッポソイ」は、「そう言う人もいるかも」という程度です。
*S氏(元NHK・東京出身)
「長細い」については、貴局のアンケートに若干ショックを受けています。(2)「ナガボソイ」は、私の年代ではあまり聞いたことがなく、聞いたとしても『三省堂国語』が言うような「異形」ではなく、「誤形」と思うでしょう。東京方言では(3)「ナガッポソイ」がありますが、高齢者、男性に多い方言です。最近は「長細い」ではなく「細長い」を使う人が増えてきている感じがします。(意味は若干違うように思うのですが、同等と思っている人も多くなっています)「細」が「後部」に来る場合は、「前部が名詞」の場合は「濁音化」し、「前部が用言」だと「清音のまま」という原則がありそうです。「心細い、腰細、か細い」などに対して、「痩せ細る」があります。「長」が「名詞化」したということでしょうか?念のため、(2)「ナガボソイ」形使用者は、「ホソナガイ」と「ナガホソイ」どちら を優先するのでしょうか?ひょっとすると、「ナガボ(ホ)ソイ」は、使用語彙から転落しているのではないでしょうか?
*S氏(元ytv・埼玉出身→大阪)
(1)「ナガホソイ」。絶対、濁りません。
*A氏(ABC・東京出身→大阪)
「長細い」の読みですが、結論から言いますと、54年の人生で(1)「ナガホソイ」以外の読みをしたことはありません。今回の場合の「ホソイ」が「濁り読み」になるという発想、感覚は私の中には存在していないので、メールを拝読して驚いた次第です。日本語としての法則等は把握できていませんが、東京生まれの私の言語感覚では、今回のお尋ねの「長細い」の「ホソイ」の読みが「濁る」ことは、選択肢にありません。何が正しいのかはわかりませんが、私の感覚は以上のとおりです。これからも原稿に出てきた場合は、迷うことなく、(1)「ナガホソイ」の「濁りなし」の読みを採用します。
*H氏(ytv・静岡出身)
もし、「長細い」がニュース原稿の中に出てきた場合は、まずデスクに「これ、細長い、じゃないの?」と尋ねるかもしれません。「長細い」は関西方言か、若者ことばで、正しい言葉としては「細長い」だと思っていたので...。だから「NHKアクセント辞典」に「長細い」が載っていたことも意外です。敢えて「長細い」で読まなければならない場合は、濁らず(1)「ナガホソイ」です。完全な成語だという意識はないため、音便変化をさせないで、濁音化も促音化もなしです。ytvアナウンス部で(2)「ナガボソイ」が多かったとは意外です。しかし、言われてみれば確かに会話の中で「ナガボソイ」をずいぶん聞いたことがある気がします。
*K氏(テレビ東京)
私は生まれてこのかた(1)「ナガホソイ(清音)」しか使ったことないですし、聞いたことがないのですが。それで何か言われたり、困ったことはありません。
*T氏(ytv・青森出身→大阪)
先日、昼ニュースの原稿に「長細い」が出てきました。正直言いますと「細長い」じゃないの??と最初、思いました・・・。なので「長細い」という言い方自体にひっかかり、「NHKアクセント辞典」を調べたので、<そこに(1)「ナガホソイ」しか載っていなかったので>、何の疑問も持たず(1)「ナガホソイ」と読みました。
*S氏(フジテレビ)
スミマセン、清音(1)「ナガホソイ」派です。
*M氏(ytv・大分出身→大阪)
(1)「ナガホソイ」。濁りません。
*A氏(フジテレビ)
私は(1)「ナガホソイ」ですね。濁って読むことは無いと思います。もっと言うと「長細い」より「細長い」と言う方が圧倒的に多いです。
*T氏(テレビ金沢)
弊社では特に迷ったことはありません。『NHK日本語発音アクセント新辞典』の988ページに基づき、(1)「ナガホソイ」と濁らずに読みます。
*I氏(テレビ信州)
私は、(1)ナガホソイです。お願いします。
*O氏(ytv・埼玉出身)
(1)の「ナガホソイ」です。
(2)ナガボソイ派(濁音)=17人
*I氏(ytv・長野県出身)
私も道浦さんと同じく(2)「ナガボソイ」と、濁って言っていました。
*M氏(元テレビ新潟・神戸出身)
(2)「ナガボソイ」!!でした。(1)「ナガホソイ」が正式なら、盲点でした。ひえー。「カン、ハツヲイレズ」とか「キラ、ホシノゴトク」とかのたぐいで、間違えないように!の範疇ですかねー。ショック&感謝です。
*S氏(テレビ岩手・兵庫出身→東京→岩手)
自分の人生で、「長細い」を(1)「ナガホソイ」と発音したことはありません。(2)「ナガボソイ」(濁音)です。アクセント辞典や国語辞典のほとんどが、(1)「ナガホソイ」(清音)のみを載せているというのには驚きました。でも、次に原稿に出てきても、(2)「ナガボソイ」(濁音)としか読めません・・。
*K氏(元ytv・岩手県出身→福岡→大阪)
興味深い話題ありがとうございます。小生は(2)「ナガボソイ」です。「理論的裏付け」はありませんが、形容詞が二つ、つながって出来ている言葉は「濁る」ことが多いような気がします。「赤黒い⇒アカグロイ」。他に類例が思い浮かびませんが・・・
*T氏(MBS)
「長細い」は、私も道浦さんと同じく(2)「ナガボソイ」と連濁したいです。「長い」と「細い」をそれぞれ独立性を高くして、「細いこと」もしっかり立てたいなら「ナガホソイ」です。「心ぼそい」という言葉も影響しているかも知れません。
*H氏(元ytv・京都出身)
僕も迷いもなく(2)「ナガボソイ」です。ただ言われてみれば(1)の「ナガホソイ」も 絵面が伝わってきますね。
*H氏(ytv・大阪・豊中出身)
私も「濁る派」で、(2)「ナガボソイ」です。
*T氏(ytv・兵庫出身)
私も(2)「ナガボソイ」だと思っておりました。
*S氏(ytv・岡山出身)
私は(2)「ナガボソイ」派です。今の今まで気が付きませんでしたが、会社PCだと(2)の「ナガボソイ→長細い」の一発変換も出来ないんですね。また、私自身は日頃は「長細い」よりも「細長い」を使っている気がします。
*K氏(MBS・愛知県出身)
私も(2)の「ナガボソイ」しか思い浮かびませんね。ちなみに私は愛知出身です。
*K氏(MBS・大阪出身)
(2)の「ナガボソイ」しかありませんよ!
*H氏(ytv・大阪出身)
私は(2)の「ナガボソイ」と迷わずに読んでしまうと思います。
*M氏(ytv・長崎出身)
私は(2)「ナガボソイ」で読みますが、(1)「ナガホソイ」でも違和感はありません。
*H氏(和歌山放送)
「長細い」は、やはり(2)「ナガボソイ」でしょう。(1)「ナガホソイ」では、かなり違和感があります。周りに聞いても、(2)「ナガボソイ」でした。
*S氏(中京テレビ)
私の周辺では、すべて(2)「ナガボソイ」でした。日常、(1)「ナガホソイ」という「清音読み」は聞いたことがありません。恥ずかしながら、辞書で調べたことはありませんでした。
*S氏(南海放送)
「長細い」の件ですが、私自身も(2)「ナガボソイ」と読みますし、弊社の上長にも確認したところ(2)「ナガボソイ」と「濁音」で読むとのことでした。
*M氏(ytv・福岡出身)
私は(2)「ナガボソイ」ですねぇ。さらに「ハダザムイ」と「濁る」派。こうなってくると「ココロホソイ?」はないですが・・・失礼。
(1)と(2)混在の回答=7人
*K氏(福島中央テレビ)
・福島県民・東京都民 ⇒(1)「ナガホソイ」(清音)
・大阪出身アナは ⇒(2)「ナガボソイ」(濁音)これで疑ったこともなかったそうです。
(3)「ナガッポソイ」(促音)は、聞いたことがありません。
*K氏(WOWOW・神奈川出身)
横浜出身です。僕は疑問の余地なく、清音の(1)「ナガホソイ」だと思いますが、元アナ&山口県出身の妻は、間違いなく濁音の(2)「ナガボソイ」だと言ってます。
*I氏(KTV・神奈川・川崎出身)
(1)「ナガホソイ」を使います。妻が大阪市内出身で、普段から(2)「ナガボソイ」と言うので、以前から気になっていました。ただ関東人の私としては「長細い」より「細長い」を使いたくなります。原稿に「長細い」があったらデスクに「細長い」に言い換えていいか聞くと思います。
*K氏(高知放送)
弊社アナウンス部員に確認しました。
10人中「ナガホソイ」「ナガボソイ」=「5対5」と半々になりました。
(1)「ナガホソイ」が東日本(東京、埼玉、北海道出身)、
(2)「ナガボソイ」が西日本(京都、大阪、宮崎、鹿児島出身)
と、見事に東日本と西日本に分かれました。「濁音」派は、心細い・か細いと同じという意見です。私は「清音」です。これは個人的な感覚でいいますと「細長い」と似た言葉だから「濁らない」のかなと。といいましても、皆あまり深く考えたことはなかったようです。参考になれば幸いです。
*K氏(元・日本テレビ)
私は、(1)「ナガホソイ」の「清音」派です。周囲では、ほぼ全員が(1)「ナガホソイ」(清音)でした。いずれも関東圏の出身です。熊本出身者と松山出身者の2名だけが(2)「ナガボソイ」(濁音)でした。(九州は割れましたね)東京・下町出身者さんは(3)「ナガッポソイ」(促音)とも言うと・・・(笑)。やはり、地域差があるのではないでしょうか...。その"境目"が気になります。面白いですね。
*O氏(テレビ大分)
アナウンス室のメンバー7人に聞いてみたら...
(1)「ナガホソイ」派=5人
(2)「ナガボソイ」派=2人
でした。うちは、ほとんどが大分県出身、全員が九州出身なのですが。
*Y氏(日本テレビ・長野出身)
私は、(1)の「ナガホソイ」しか思い浮かびません。周りにいるアナウンサーや報道フロアの人間に聞いても、(1)「ナガホソイ」という「清音」が多数派でした。(2)の「ナガボソイ」派は、大阪出身のTさんと、滋賀県出身のKキャスターだけでした。やはり東西差があるのでしょうか?でも、「か細い」とか、「心細い」は、ともに「ボソイ」と、濁音になりますね。マジックの極細も、「ゴクボソ」と濁音ですね。もしかしたら、何か法則があるのでしょうか?
まとめると、
(1)ナガホソイ(清音)=13人
(2)ナガボソイ(濁音)=17人
ですが、最後の「(1)(2)混在」というのは、ご本人以外の方にも聞いて頂いた結果「混在」ということなので、その人数(わかっている分)を(1)と(2)に振り分けた上、、私、道浦=(2)ナガボソイ(濁音)も人数に加えると、
(1)ナガホソイ(清音)=19+α
(2)ナガボソイ(濁音)=21
ということになります。「+α」は「K氏(元・日本テレビ)のオフィスの周囲にいた関東出身の人たち」と「Y氏(日本テレビ・長野出身)の周りにいるアナウンサーや報道フロアの人間」です。それぞれ「5人ずつ」と仮定すると、「10人」プラスになって、
(1)ナガホソイ(清音)=29※(推定)
(2)ナガボソイ(濁音)=21
といった感じですね。いずれにせよ、かなり拮抗しています。また、「生まれ育った"地域差"」があるようで、大きく分けると、
*東日本=(1)ナガホソイ(清音=濁らない)
*西日本=(2)ナガボソイ(濁音=濁る)
という傾向があるようです。
しかし、大分出身者を始め「九州」は、混在しているような感じですねえ。
これはおもしろいな。「清音・濁音」で「東西差」がある言葉では、
「保健所」「研究所」「保育所」
などの「所」は、
*東日本=ジョ(濁音=濁る)
*西日本=ショ(清音=濁らない)
と、「長細い」とは逆での傾向があるんですけどね。
同じように「名字」の読み方でも、
「中島」「浜崎」
の「島」「崎」については、
*東日本=ジマ、ザキ(濁音=濁る)
*西日本=シマ、サキ(清音=濁らない)
という傾向があるようですが。日本語って面白いなあ。
(2017、8、25)