新・読書日記 2017_089
『泣いたの、バレた?』(酒井順子、講談社文庫:2016、10、14)
『週刊現代』で連載しているコラムをまとめたものの第9弾。2013年5月~2014年5月分。
これを読んだ目的は主に、「~だそう。」という形の文体を酒井順子さんが使っているのではないか?その実例を集めるため、です。
で、結局、見つかりました!
「東北に、来てくれました」で、伊藤若冲の蒐集家・プライス氏について、
*「五十歳で仕事を引退し、日本美術の勉強・蒐集の道に入ったのだそう。」(18ページ)
と出て来たほか、「ハワイとハワイアンズ」では、
*「観光地化のために埋め立てられたのだそう。」(47ページ)
さらに「民謡のインタラクティブ性」では、
*「『津軽海峡・冬景色』は、さゆりさんが十代の頃の歌なのだそう。」(54ページ)
「W浅野、フォーエバー?」では、
*「W浅野は五十四歳という設定だそう。」(110ページ)
「討ち入りの季節ですね」では、
*「芸能においては仇討ちものの人気が高かったため、演目の内容として取り入れられることが多かったのだそう。」(145ページ)
「中年紅白鑑賞法」では、まず、
☆「黒柳さんは過去、何度も紅白の司会をされたことがあるのだそうで、」(177ページ)
と「だそう」のあとに「で、」を付けて文章を繋いでいます。これなら「普通」ですよね。そして、そのすぐ後には、
*「『紅組の歌手はみんな、丸髷(まるまげ)を結った芸者さんみたいな人ばかりが出て来て、誰が誰やら見分けがつかないんですよ』といった状態だったそう。」(177ページ)
と「だそう。」を使っています。
「東北の書店にて」では、
*「問い合わせが多数、来たのだそう。」(206ページ)
ということで、私が見た限り(見落としがあるかも知れませんが)、「7回」使っていました。この本に収められたコラムの数は「48」ですから、「7回」というのは「多い」とまでは言えませんね。でも、個性的な文体として「たしかに使っている」とは言えるでしょう。
酒井さんの文体で言うと「少子っぷり」(165ページ)、「晩婚っぷり」(167ページ)「司会っぷり」(177ページ)のような「○○っぷり」が特徴的だと以前から思っていましたが、こういった「~だそう。」という「体言止め風」の語尾にも特徴がありますね。
この文体を読んでいて感じたのは、酒井さんは、
「『源氏物語』や『枕草子』の文体を意識しているのではないか?」
ということでした。
ということで、この「読書」は、大きな成果を上げることができたと言えるでしょう。