新・ことば事情
6402「ワースト4位」
6月30日に行われた「新聞用語懇談会 放送分科会」で、こういう質問をしました。
『先日(6月16日)のNHKお昼のニュース(関西ローカル)を見ていたら、奈良県の未婚率が、「全国ワースト4位」と表現していました。言うまでもなく「ワースト」の意味は「最も悪い」ですから、「ワースト記録」のように「最も悪いもの」に使うのが本来の使い方だと思いますが、一般的には「ワースト3」「ワースト1」「ワースト10」などとも使われています。放送では、こういう使い方は許容でしょうか? また「ベスト10」と「トップ10」は、どちらを使いますか?』
これに対する各社の回答は、
(NHK)「ワースト○位」という表現については、昔から問題になっている。1980年代から使用例がある。当時は「悪いほうから○番目」「全国で○番目に悪い」とすべきだという意見が強かったが、次第に「ワースト○位」が日本語として定着してしまった。しかし、使われる場面は「軽い話題・問題」に関してのみで、たとえば「死亡率」「死者数」などには使わない。それ以外に関しては「使っちゃいけない」とまでは・・・。そもそもこのニュース、「未婚率=結婚しない」ことを「ワースト=悪いこと」と捉えていることのほうが問題かも。また、「ベスト」と「トップ」については「ベスト=評価が入る」「トップー=上からの順位(評価は入らない)」という使い分けがある。
(MBS)MBSの東京制作の番組についてのチェックをしているが、「犯罪率」では「ワースト」は使っている。京都のお寺の人気ランキングで最初「ベスト」としていたのを「トップ」に直した。「ベスト」は例えば「居酒屋人気ベスト10」などではOK。「良いほう」という意味で、日本語として定着している。
(WOWOW)スポーツでは「ベスト8」「ベスト4」は定着していて、「ベスト=一番良い」とは限らない。英語では「ベスト4」とはもちろん言わないが(=semi-finalistセミ・ファイナリスト)。
(TVO)ランキング物で「ランキング1位」という言い方には「ベスト1」を使う。「ひったくりNo.1」は「悪いこと」だが、ある意味"名誉"に感じて「ワースト」とすることも。
といった感じでした。
「ワースト」=悪いほうからのランキング
「ベスト」=良いほうからのランキング
というような意味で、もう「日本語の外来語」として定着しているようですね。