新・ことば事情
6400「『頭取』の読み方」
在阪某局のベテランアナウンサーと話していたところ、
「実は先日うちの若いアナウンサーが、銀行の『頭取』を『トウシュ』と読んでしまって・・・」
という話を聞きました。へえー、最近の若者は(私もこういう言い方が似合う年齢になって来ました)、
「トウドリ」
と読めないんだ!というか「頭取」という存在を知らないのかな?でも新聞を読んだり、ドラマを見たり、映画を見たりしたら出て来るでしょ、銀行の「頭取」。『半沢直樹』でも出て来たはず。たしかに「トウドリ」という読み方は、
「重箱読み」
ではあります。でも、ねえ・・・。
数日後、「ちょっと待てよ」と。
「他局の若いアナウンサーに起きている出来事は、うちでも起きているのではないか?」
と思って、今年4月入社した男女2人の新人アナウンサー(まだデビューしていないので「アナウンサーの卵」ですが)に、「頭取」と書かれた紙を見せて、
「これ、何て読む?」
と聞いてみました。すると、
「トウドリ」「トウシュ」
という2つの言葉が、2人の口から別々に発せられたのです!思った通りだ!正解率は、50%。この様子を見守っていたアナウンス部の上司は、驚いた表情をしていました。今、世の中はこんな状況なんだよ。当然、
「ちゃんと、これぐらい読めるようにしとかなきゃダメだよ」
と指導。
「トウシュ」と読んだ新人アナいわく、
「もちろん、『トウドリ』という言葉は知ってるんですけど、文字で見たことが無くて・・・」
・・・新聞、読めよ。
しかし、私達の若い頃とちょっと違うのは、最近は「銀行」も、
「○○ホールディングス」
というような、
「持ち株会社」
の下にぶら下がる形になって、トップで世間に出て来るのは「頭取」ではなく、その「持ち株会社」の
「社長」
になっていたりするので、昔に比べれば「頭取」という言葉に接する、目にする機会は減っているのかもしれません。ま、言い訳にはなりませんけどね。
ついでに、
「重版出来」
と書いた紙を見せて、読み方を尋ねたところ、
「ジューハン・シュッタイ」
と、2人共ちゃんと読めたのです!普通「出来」は、
「デキ」
と読んじゃうよね。
「シュッタイ」
なんて、出版業界の人でもないと読めないはずなのに、もしかしたら・・・
「はい!ドラマ、毎週見てました!」
"他局"だけどね。
タイトルにすれば、読めるんだな。
「頭取」も、ドラマのタイトルにしたら、みんな読めるようになると思いました。