新・読書日記 2017_083
『正社員消滅』(竹信三恵子、朝日新書:2017、3、30)
衝撃的な、シンプルなタイトル。
そもそも「派遣社員」がこれだけ定着する前までは、「正社員」という言葉も、それほど一般的ではなかったのではあるまいか?普通に「社員」と言っていて、たまに「嘱託社員」の人がいるぐらいだったように思う。つまり「正社員」を減らしてそれ以外の「社員」を増やして来たここ20年ぐらいの歴史は、正しく「正社員を減らす」目的で行われたのだから、その行き着く先が「正社員消滅」なのは、当然の帰結とも言えるだろう。
なんで「正社員」を減らすのか?「正社員」は「終身雇用」と一体で、福利厚生や年金といった「ふだんは見えない部分の負担」が、会社にとって大きいから。しかも「年金」などは、これまでは「定年退職」後せいぜい10年かそこら払えば良かったのが、20年30年と続く重い負担になって来たから。働いてくれている間の分は払うけど、その後、働かなくなってからもずっと面倒なんて見てられない!という、会社側の悲鳴と共に本音が聞こえてくる・・・一理ある。でも、そんなことをされては、困る。
「正社員を消滅」させることは「終身雇用制度の解体」ということなのですね。
本書ではまず、すでに「正社員が消えた職場」として「大手スーパー」「郵便局」「メーカー」「公務職場」などの実例が挙げられている。そして「正社員を支えてきたもの」が何かを説明。現在、「正社員」を減らすために(「正社員なんかイヤだ」と思わせるために)高い拘束力とプレッシャーで「正社員ゼロ化」のための「正社員追い出しビジネス」が拡大していると。さらに「働き方改革」にひそむワナについても詳述している。
何か「ウソ臭さ」の漂う、お上主導の「働き方改革」。7月14日付「読売新聞」朝刊トップの見出し「『脱時間給』連合が合意」も、働く者の集まりのはずの「連合」が、経営者側と結託してしまったようにも見える。労使ともに納得のできる「働き方」について考えなくてはいけない。