新・ことば事情
6351「『ヒアリ』のアクセント」
6月14日のニュースで、中国・広東省から神戸港に入港した貨物船のコンテナの中から、南米原産で毒針を持つ、
「ヒアリ」
が、国内で初めて見つかったというニュースがありました。それに対して、三浦隆志アナウンサーから、
「アクセントは『ヒ/アリ』と『平板アクセント』ですか?それとも『ヒ\アリ』と『頭高アクセント』ですか?『NHKアクセント新辞典』にも載っていないんですよ。」
という質問を受けました。
うーん、けさ(6月14日)の新聞では読んだ記事だったけど、アクセントは気にしてなかったなあ。
「漢字では『火蟻』と書くんですけど・・・。朝の『す・またん』では、辛坊さんは『平板アクセント』で『ヒ/アリ』と読んでいましたが。」
三浦アナウンサー。
「火」ならば「火」の「蟻」は、
「火花(ヒ\バナ)」「火鉢(ヒ\バチ)」「火箸(ヒ\バシ)」
「火の粉(ヒ\ノコ)」
など等と同じ、「頭高アクセント」で、
「ヒ\アリ」
のようにも思うけどなあ。ただ、それだとなんか、
「ひ\らり」
という「オノマトペ(擬態語)」のようにも聞こえますね。「平板アクセント」だと、
「真っ赤=スカーレット=緋色(ひいろ)の蟻」
となって、
「緋蟻」
かのようにも思うんだけど。色は何色?
「赤茶色みたいです」
うーん、そうかあ。でも「真っ赤」じゃないんだったら「平板アクセンント」のほうが無難かなあと答えてから、「アクセント辞典」以外にどこかに載っていないかと思って『新明解国語辞典』を引きましたが、「ヒアリ」は載っていません。
ふと思いついて、電子辞書の『広辞苑』の「逆引き」機能を使って「あり」で引いてみたら、いろんな「あり」が出て来ました。その中から「蟻」をピックアップしたところ、
「赤蟻」「兵隊蟻」(「送り蟻」「寄蟻」)「黄蟻」「姫蟻」「家姫蟻」「熊蟻」「黒大蟻」「黒蟻」「黒山大蟻」「黒草蟻」「木口(こぐち)蟻」「女王蟻」「白蟻」(「吸付蟻」)「羽蟻」「働き蟻」「蜜蟻」「山蟻」
という「蟻」が載っていました。( )内は「生物の蟻」ではないものです。
しかも、この中のいくつかに関しては、何と音声ボタンを押すとしゃべるのですね、電子辞書。やるなー。それによってアクセントが確認できたのは、
「ア/カアリ」(平板アクセント)
「シ/ロアロ」(平板アクセント)、「シ/ロ\アリ」(中高アクセント)
「ハ/アリ」(平板アクセント)
「ハ/タラキ\アリ」(平板アクセント)
でした。この中の、
「ハ/アリ」
が、参考になりそうですね「ヒアリ」と「語構成」が似てるので。そう考えると「平板アクセント」かな。
その後、午前11時30分からの各局のお昼のニュースを見ていたら、
「日本テレビ・TBS・フジテレビ・朝日放送」
ともに「平板アクセント」の、
「ヒ/アリ」
でした。「テレビ朝日」と「NHK」はこのニュースは、やらなかったようです。
読売テレビでも、
「ヒ/アリ」
で放送しました。
なお余談ですが、昔「青年海外協力隊」で2年間「ガダルカナル」へ行っていた、「ミヤネ屋」スタッフの宇野浩平君は、「ヒアリ」に咬まれたことがあるそうです。
「『ヒアリ』は英語で『Fire Ant』なので、『火蟻』は直訳。咬まれたら猛烈に痛いですよ!」
「咬まれたこと、あるの?」
「そりゃもう、ガダルカナルでは、そこらへんにいますもん」
「『咬まれた』って感じ?それとも『刺された』という感じ?」
「そんな『刺された』なんて、生優しいもんと違いますよ、『咬まれた』としか、感じません!」
ということなので、皆様、お気を付けくださいね。