新・読書日記 2017_074
『路地裏の民主主義』(平川克美、角川新書:2017、5、10)
内田樹三の盟友(幼なじみ)・平川克美さんの新著。内田さんが江弘毅さんなんかと、
「街場の○○」
という視点・タイトルの本を出しているのに対して、平川さんはさらに微視的に、
「路地裏の○○」
という見方をしているようである。帯には、
「裏道から覗けば 政治の嘘や欺瞞が 透けてくる」
とあります。「生活実感」をベースに政治を見ていくということでしょう。それは「大文字」で書かれた「グローバリズム」「国家」などとは対極の、「小文字」で書かれた「個人」に根差した生活の視点でしょう。なぜか現在の政権が嫌う「人権」。きっと「人権」を「振りかざす」のが政権としては嫌いなんだと思うけど、振りかざすのではなく「ただそこにあるもの」が「人権」なのではないかな、民主主義国家においては。「大文字」の言葉からは「身体性」が失われると。
で、この本ですが、タイトルにも近い「第1章 路地裏から民主主義を考える」が一番興味深かった。「終章」の中の「オリンピックと民主主義」も、短いけど「なるほど」と思いました。「オリンピックの嘘」、オリンピックの持つ「偽善性」のようなところ、「オリンピック」という「大義」をかざして、自らの政治の進め方を押し通す。
「オリンピックを政治に利用してはならない!」などと原則論を言ったところで、これだけ巨大化し、経済と連関を持つ(つまり「金儲け」まみれ)ようになってしまっては「政治」と関係なしにはコトは進まないのも、常識ではあるが。
「オリンピックのような大義」を振りかざすのが「大文字」の政治、「人権」を振りかざすのは「小文字」の政治か?バランスが大事なのにね。
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