新・ことば事情
6349「老後と生前と後生」
「平成ことば事情220生前」を書いてから、もう17年経つのですが、ずっと解けない問題として残っているのが、
「生前」
です。なぜ「生前」と言うのか?です。たとえば、
「老後」
という言葉は、
「老年期に入った後」
という意味ですよね。これに対して、「生前」はどうか?と言うと、
「生が終わる前」
つまり「生きていた間」。
「生前」の反対語が「死後」。「死んだ後」=「死んだ時点より後」。
「老後」の「老」、「生前」の「生」、「死後」の「死」は、「前」か「後」かの「ポイント」として、
「老」「生」「死」
があります。
また、「戦前・戦後」と言う場合には、
「終戦」
がポイントとなります。そう考えると「生前」「死後」は、
「生の終わり=死」
がポイントですよね?
そのあたりまで考えて、ほおっておいたのですが、先日、五木寛之さんと田原総一朗さんの対談本『われらマスコミ渡世人~こうして戦後を生きて来た』(祥伝社新書:2017、6、10)を読んでいて出て来た、
「後生」
という言葉を見て「ハッ!」と思いました。その本によると(五木さんの説明によると)「後生」は「死後」、つまり、
「生きていた後」
だと言うのです。つまり、
「AB」
と漢字が並んだ時の意味は「AのB」ではなく、「漢文のレ点(返り点)」のように、
「BのA」
なのだと。それならば「生前」は「生きていた前」ではなく、
「前に生きていたとき」
なのではないか?と思い至りました。
これってどうでしょうか???すんごい発見をした気分なのですが。