新・ことば事情
6348「『大雨』は『降る』か?『ある』か?」
用語懇談会でご一緒している、関西テレビの山田アナウンサーから質問のメールが届きました。
「雨の呼称として『小雨が降る』という表現は使いますか?先日原稿に出てきて『大雨や小雨というものは、にわか雨と一緒で降るものではない』という意見がありました。『大雨になる』『小雨の中歩いてくる』とするべきだという事ですが...道浦さんはいかがでしょうか?」
これに対して、こんな返事をしました。
『お尋ねの「『大雨』は『降る』か?」ですが、結論から言うと、
「降る」
でも良いのではないでしょうか?
「○○雨」
という「複合の構成」には「2種類」あると思います。
つまり、「○○」の部分が、
(1)「○○のように降る」雨
(2)「○○のような(状態の)」雨
の2種類です。
このうち、(1)の場合は「○○」のない意味の中に「降る」を含んでいるので、その「○○雨」が「降る」とすると「重複」になってしまうので、動詞は「ある」を使うのですね。「にわか雨」は「にわかに降る雨」なので、
×「にわか雨が降る」→○「にわか雨がある」
なのでしょう。
しかし「大雨」は「大量の雨」、「小雨」は「少量の雨」と考えれば、「○○」部分に「降る」という動詞を含みませんので、重複とはならず、
○「大雨が降る」○「小雨が降る」
だと思います。
しかし、実はこの部分を、「大量に降る雨」「少量しか降らない雨」と感じる人がいれば、それは「○○」部分に「降る」を含むので、「大雨が降る」「小雨が降る」は「重複」と考えられます。
つまり「大雨」「小雨」を、「降っている状況」と見るか「雨の状態」で変わって来ます。
(1)「○○のように降る」雨=「降っている状況」=「動詞的」
(2)「○○のような(状態の)」雨=「雨の状態」=「名詞的」
この両用に使えると思うので、
「必ずしも『間違い』とは言えない」
のではないでしょうか。
平成ことば事情2264「にわか雨があるでしょう」
平成ことば事情4293「『にわか雨』は『ある』か?『降る』か?」
平成ことば事情421「秋雨」
もお読みください。