新・ことば事情
6333「クリムゾンとスカーレット」
(2009年9月16日に書き始めて、ほったらかしでした)
「赤」を表す2つの英語、
「クリムゾン」「スカーレット」
これはどのように違う赤なのか?前から気になっていました。私の持つイメージは次の通りです。
*「クリムゾン」=(1)深紅色の、(2)血生臭い(血腥い)、ものすごく不気味な=濃いくれない色
*「スカーレット」=緋色=茜色=紫色を帯びた赤黄色、鮮やかな赤いカーテン
と、このメモを残したまま、
8年が経ちました・・・・
で、ことし(2017年)4月、「名探偵コナン」の映画の新作、
『名探偵コナン~から紅の恋文(ラブレター)』
を公開初日に見て来ました。
おもしろかった!!
舞台が大阪と京都で、大阪で出て来る、
「日売(にちうり)テレビ」
の社屋が、全くもって、
「読売テレビ」
の社屋がモデルで、周辺の描写も「実写」のようでそっくりだったので、
「うわあ、そっくりや!」
と思って見ました。
さて、この映画のタイトルの「英語表記」が、「から紅(くれない)」を、
「crimson(クリムゾン)」
と記していました。
そうか「から紅(唐紅)」が「クリムゾン」なのか!と思いました。それまで私の持っていた「クリムゾン」という言葉のイメージはと言うと、ジャン・レノが主演した映画、
「クリムゾン・リバー」
で、これは、
「血の川」
というような意味だったと思います。
一応、辞書を引いてみます。○は載っていたもの、×は載っていなかったもの。
<クリムゾン>
○【広辞苑】深紅色。濃紅色。
○【新潮現代国語辞典】「クリムソン」と濁らない見出し。濃い紅色。深紅色。
○【デジタル大辞泉】「クリムソン」と濁らずに、~見出しで、本見出しは「クリムソンレーキ」。深紅色の西洋絵の具。
△【精選版日本国語大辞典】「クリムゾンレーキ」として載っていました。(クリムソンレーキ・クリムソンレーク)深紅色の顔料(「外来語辞典」1914)
×【明鏡国語辞典】「見出し」なし。「クリムゾン」で検索したら「くりまんじゅう(栗饅頭)」が出て来ました・・・。
×【新明解国語辞典】「見出し」なし。「クリムゾン」で検索したら、なんとこれも「くりまんじゅう(栗饅頭)」が出て来ました!
×【旺文社標準国語辞典】「見出し」なし。「クリムゾン」で検索したら、なんと今度は「グリム兄弟」が出て来ましたー!
×【NHK日本語発音アクセント辞典】「見出し」なし。「クリムゾン」で検索したら「クリミア」が出て来ました。「クリミア半島」の「クリミア」。ウクライナです。
×【三省堂国語辞典】「見出し」はなし。
×【岩波国語辞典】「見出し」はなし。
「クリムソン」は「クリムソンレーキ」という染料(の色)の略称で、それが濁って「クリムゾン」になったのでしょうね。「ウィキペディア」では、
「クリムゾンまたはクリムソン (英語: crimson) は濃く明るい赤色で、若干青みを含んで紫がかる。彩度が高く、色相環上ではマゼンタと赤の中間に位置する。もともと地中海世界においてケルメス属のカイガラムシから、後に南米産のコチニールカイガラムシ(エンジムシ、学名 Dactylopius coccus)から得られる染料の色であったが、一般的に赤い色を指し示すようになった。」
とあります。
<スカーレット>
○【広辞苑】深紅色(しんこうしょく)。緋色(ひいろ)。
○【明鏡国語辞典】緋色(ひいろ)。深紅色。
○【新明解国語辞典】深紅色(の染料)。緋(ヒ)。
○【精選版日本国語大辞典】緋(ひ)色。真紅(しんく)。深紅色。猩猩緋(しょうじょうひ)。
○【デジタル大辞泉】緋色。深紅色。
○【三省堂国語辞典】深い紅色。緋(ヒ)。
○【新潮現代国語辞典】緋(ヒ)色。深紅色。
×【旺文社標準国語辞典】「見出し」なし。「スカーレット」で検索したら「スカーフ」が出て来ました。
×【NHK日本語発音アクセント辞典】「見出し」なし。「スカーレット」で検索したら、これも「スカーフ」が出て来ました。
×【岩波国語辞典】「見出し」はなし。
『精選版日本国語大辞典』に出て来た「猩猩緋(しょうじょうひ)」って、何?「猩猩」は「サル」でしょ?「サルのお尻(ホッペタ)の色」ってことかな?
ちなみに、ここまでよく出て来た「深紅色」も引いてみました。
<深紅(しんこう)色>
○【広辞苑】(1)→しんく(2)陶土にカルミンを加えた紅色の絵具。クリムソンーレーキ
○【新潮現代国語辞典】(1)濃い紅(クレナイ)。絵の具のクリムソンレーキの色で、黄色味のない濃いあか。(2)まっか。しんく。
○【新明解国語辞典】「しんこう」=濃い紅(の絵の具)「深紅色」
○【精選版日本国語大辞典】(1)濃いくれない。深紅色。真紅(しんく)。(2)礬土(ばんど)にコチニールという動物性色素を加えて作った紅色の絵の具。クリムソンレーキ。
○【デジタル大辞泉】(1)→しんく(2)礬土(ばんど)に動物性色素のコチニールを加えて製する紅色の絵の具。クリムソンレーキ。
×【旺文社標準国語辞典】「見出し」はなし。
×【NHK日本語発音アクセント辞典】「見出し」はなし。
×【明鏡国語辞典】「見出し」はなし。
×【三省堂国語辞典】「見出し」はなし。
×【岩波国語辞典】「見出し」はなし。
「深紅色」は「クリムソンレーキ」のことで、その作り方まで『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』には載っているのですね。
そして「コナン」の映画では「crimson(クリムゾン)」と英訳されている「から紅」も!
<から紅>
○【広辞苑】(韓紅)(韓から渡来した暮れに亜の恋色。深紅の色。古今和歌集の(秋)「ちはやぶる 神世もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」
○【明鏡国語辞典】(唐紅・韓紅)あざやかな濃い紅色。深紅色。▽舶来の紅の意
○【新明解国語辞典】(唐紅)濃くて美しい紅色。深紅色。▽「韓紅」とも書く。
○【精選版日本国語大辞典】(韓紅・唐紅)(1)(舶来の紅の意)濃い紅色。深紅色。その染め色の美しさを特に賞美していう語。(2)(1)の色をした意図や布。(3)植物「寒紅梅」の異名。(4)香りの名・分類は伽羅(きゃら)。
○【デジタル大辞泉】(唐紅・韓紅)(舶来の紅の意)鮮やかな濃い紅の色。
○【三省堂国語辞典】(唐紅・韓紅)(雅)美しい、こい紅色。
○【新潮現代国語辞典】(韓紅)濃い紅色。鮮紅色の美称。
○【旺文社標準国語辞典】(唐紅)こい紅色。深紅色。
○【NHK日本語発音アクセント辞典】(から紅【韓】)「見出し」あり!
○【岩波国語辞典】(唐紅・韓紅)濃く美しいくれない。深紅色。
ということで、「濃い紅色」の表現はいろいろあって、どうもかなりの部分、重複しているような感じがしました。