新・読書日記 2017_051
『残業税』(小前亮、光文社文庫:2017、2、20第1刷・2017、3、20第3刷)
小説である。
今、世の中で「残業問題」「働き方改革」が問題になっているところに着目した、非常に「ユニーク」な視点。興味深い。
舞台は、残業をすればするほど、取られる税金が増える「時間外労働税」というものが導入された日本。これによって、残業時間は劇的に減ったが、もっと働かせたい企業も、残業代を稼ぐために残業したい労働者も多く、「サービス残業」という"脱税"も後を絶たない。そんな中、主人公は「マルザ」と呼ばれる「残業調査官」と、「熱血・労働基準監督官」のデコボコ・コンビ。ちょっとコミカルな『相棒』といった感じの構成は、読みやすい。
そして、「残業」というものに対する「日本人の思い」が詰まった作品だと思う。
「仕事」「会社」「お金」
この3つについての「日本人的な感情」を抜きにして、徹底的な「働き方改革」は成り立たないように感じるのだが。
「電通・過労自殺事件」を経て、身体的にも精神的にも「自殺」に追い込む(追い込まれる)ような働き方は間違っているということは、ほとんどの国民に知れ渡ったと思うが、それは当然のこととして、その次へ進むには、この"感情"の問題を解決しなくてはならないのではないか。(解決しなくても良いのかもしれないが。)
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