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『道浦TIME』

新・読書日記 2017_049

『なぜ、残業はなくならないのか』(常見陽平、祥伝社新書:2017、4、10)

常見さんは、「学生の就職関係」専門のライターさんかと思っていたが、「働くこと全般」のライターさんだったのか。著者者紹介の所には「働き方評論家」とあった。

やはりきっかけは「電通・過労自殺"事件"」。あの"事件"をきっかけに、タイトルの「なぜ、残業はなくならないのか」について考察された本。

1980年代から現在にいたるまで「労働時間」は減り続けているが、「正規労働者」に限って言うと、労働時間は横ばい(「正規労働者」以外の派遣やバイトといった「短時間労働者」が増えたことで、「平均」の労働時間は減って来ている)であるし、「サービス残業」もあり、「長時間労働」が多く、「有給休暇を取りにくい」というのが現状。

「第2章」が、タイトルと同じ「なぜ、残業は発生するのか?」では、「企業側から」と「労働者側から」のその「理由」をまとめている。それによると「企業側」は「顧客からの不規則な要望に対応するために必要」「業務量が多いため」「仕事の繁閑の差が大きいため」に「残業」が発生する。一方「労働者側」は「人員が足りないため(仕事量が多いため)」「予定外の仕事が突発的に発生するため」「業務の繁閑が激しいため」。

著者は日本における「残業」の根本的問題は「仕事の任せ方」にあると論じる。欧米型の「仕事に人をつける」(ジョブ型)ではなく、日本では「人に仕事をつける」(メンバーシップ型)。つまり「会議を減らす」とか「仕事が終ったらすぐに帰る」といったような小手先の「改善」ではコトは解決しない。「改革」は、「採用方法」から「仕事の契約」に関するまでの「変更」を伴うものであることがわかる。そこまで手を付けないと「改革」とは言えない。つまり「終身雇用制度の解体」であろう。それが果たして企業にとって、労働者にとって「良いこと」なのだろうか?欧米型の働き方が「良い働き方」なのだろうか?すでに「正規社員」をあまり採らなくなっていることで「終身雇用制度」は崩壊しつつあるが、その結果、「より良い労働環境」になっていると言えるだろうか?

そのほか著者は「成果と時間を切り離すと、ますます労働時間が増える可能性もある」と指摘(179ページ)、つまり「成果主義」への疑問である。そりゃそうだろうと思う。会社で仕事をしないだけで、いわゆる「風呂敷残業」になるだろうし、家だと、時間を気にしないで(仕事を)やってしまう恐れも高い。

「働き方改革に企業が本気で取り組むには、投資が必要となる。人事が制度を作るだけでなく、人材の投入、IT投資、総務によるオフィスの投資などが必要となってくる。部門間の連携がないと、成功しにくい」(191ページ)とも述べている。

「やっぱりな」という感想。示唆に富む一冊であった。でも、できるのかな、本当に。・・・・。


star4

(2017、5、10読了)

2017年5月15日 20:17 | コメント (0)