新・ことば事情
6324「『一家』は全員か?」
去年(2016年)11月に富山で開かれた新聞用語懇談会の秋季総会で、私からこんなテーマを出しました。
『三笠宮さまご逝去の際の「斂葬(れんそう)の儀」で、秋篠宮家では、悠仁さまを除いた4人が出席されました。この場合に、出席された「秋篠宮家の4人」を指して「秋篠宮家ご一家」と「一家」を使っていいのか?とスタッフから質問を受けました。「一家」は「全員」というイメージがあり、辞書でも「全員」と記したものもありますが、そこまでは書いていないものもあります。「秋篠宮さまとご家族」のようにしたほうがいいのでしょうか?』
これに対する各社からの対応は、以下の通りです。
(日本テレビ)今回の三笠宮さまの「斂葬の儀」では「秋篠宮ご夫妻、眞子さま、佳子さま」とした。コメントの尺的には「秋篠宮さまご一家」と「2秒」も変わらない。しかし今回のケースは、年少でまだご公務ができない「悠仁さま」がいらっしゃらなくても「ご一家」として良いのではないか。これが「ご家族で夏休み」というようなケースは、全員おそろいでないと「ご一家」は使えない。
(朝日新聞)今回は「皇太子ご夫妻と皇族方」とまとめた。「一家」は、一般的には「全員そろっている」イメージがあるが、「1人欠けても可」だろう。ただし「いる」「いない」が問題になるケースでは「全員」でないとダメ。お子さまは(ご公務に関係ないので)いなくても問題にはならないだろう。ただ「皇室」は、読者・視聴者がよく知っていて関心も高いので、注意が必要。
(産経新聞)全員そろってはいない場合、「秋篠宮ご家族」ではどうだろうか。
(毎日新聞)今回は「一家」は使わず「秋篠宮ご夫妻ら」とした。社会部デスクに聞いたところ、「1人でも欠けていたら『一家』は使わない」とのことだった。辞書を引くと「一家総出で」「一家そろって」という用例が多いので、「全員」のイメージが強いが、「必ず『全員』」と縛るのは難しい。
(読売新聞)「一家=全員」のイメージを持っている人が多いので、今回のようなケースには使わないほうが良い。今回は「秋篠宮ご夫妻ら皇族方」「秋篠宮家の長女・眞子さまら」とした。
(日経新聞)今回は「○○さま、○○さまら皇族方」とした。一般論で「一家」は「必ずしも『全員』でなくても良い」。ただし「全員かどうかが問題になるケース」ではダメ。
(東京新聞)今回は「ご一家」は使わず。「そのご家族だけで」どこかへ行かれる場合には、全員そろっていなければ「一家」を使ってはダメだろう。
(産経新聞)「一家=一族=全員」のイメージがあるが、1人でも欠けたら「一家」と言ってはダメか?と言うと、そうでもない。秋篠宮家でも、眞子さまが留学中に、それ以外の4人を指して「秋篠宮さまご一家」と使っていた。また、悠仁さまは「未成年」で「ご公務ができない」ので、(「ご公務」に関連した場合は)除いても可。データベースで検索したら、「秋篠宮(さま)ご家族」という表現は出て来なかった。なお、産経新聞では「ら」は使わないので、今回は「秋篠宮ご夫妻はじめ皇族方」とした。
(共同通信)「秋篠宮ご夫妻」とした。「一家」「家族」は使わず。社会部デスクに聞いたところ、「『全員』じゃないので『ご一家』は使わなかった」とのこと。『日本国語大辞典』『広辞苑』には「一家=全員」と書いてある。そう思っている人も多いので、全員そろっていないときには「一家」は使わない。
(時事通信)今回は「皇族方」とした。皇室担当記者に聞くと、「具体的に個人名を書くほうが良い」とのことだった。「一家」は「全員」のイメージが強い。
(NHK)今回は「ご一家」は使っていない。状況に応じて使う。
(TBS)今回は「ご一家」は使っていない。眞子さまの場合のように「留学されていて不在なのが自明である場合」は、全員でなくても「一家」を使っても良いのではないか。
(MBS)日本テレビと同じく、4人しか映っていないのであれば、「秋篠宮ご夫妻と佳子さまと眞子さま」と全員の名前を言う。悠仁さまが欠けた「4人」で「一家」は使わない。「秋篠宮ご夫妻とお子様方」もOK。ただ、正月の「皇室アルバム」では毎年、両陛下・皇太子ご夫妻・秋篠宮ご夫妻らを「天皇ご一家」と言うが、過去に「何人(1~2人)か欠けている場合」があったが「ご一家」を使っていた。
というような意見が、各社から出ました。