新・ことば事情
恐喝未遂容疑で逮捕された、故・坂口良子さんの娘・坂口杏里容疑者。4月20日の「ミヤネ屋」のテロップを事前にチェックしていたら、その恐喝容疑の金額について、
「わずか3万円」
と表現していました。たしかに、
「たった3万円のために恐喝しようとして捕まって、バカだよな」
というふうに多くの人は思うでしょう。その意味では、たしかに、
「わずか」
で良いのですが、そこで少し考えました。
「『3万円』という金額そのものは、『わずか』と切って捨てていいのか?」
というのも、その「わずか3万円」のために命を絶つような出来事も、世の中にはあります。それでも「わずか」を使うのならそのあたりも配慮した上で使うべきでしょう。放送では「わずか」という主観的表現を外して、
「客観的な事実としての金額」である、
「3万円」
にして放送しました。
その翌週、今度はインターネットのオークションサイト「ヤフオク」「メルカリ」に、
「現金」
が出品されるということがおきました。それは、
「『一万円札10枚』を『12万円』で」
というような出品の仕方で、実際に落札もされています。(実際は「12万円」ではなかったが、「10万円より多い金額」だった。)
「え?一万円札が10枚なら10万円でしょ、それを額面より多い12万円で買うって、どういうこと?」
と普通の人は思うでしょう。私もそう思いました。
つまり、このインターネットオークションでの支払いは「クレジットカードで」行って、
「キャッシュ=現金10万円」
を手に入れているのです。
今すぐに現金を手に入れるため「手数料」に相当するのが「2万円」ということなのです。「一万円札10枚」を購入した人は、
「手元に現金はないけど、クレジットは使えて、今すぐ現金が必要な人」
ということで、
「生活困窮」「借金返済期日が迫っている人」
などが考えられます。クレジットカードの支払いは「約2か月後」なので、それまでの「つなぎ融資」のような感じでしょうか。しかし、返済するメドがあるとは思えませんが。
しかも「お札を出品した人」がアブナイ関係の人であったら、その人は、
「生活困窮者の個人データ」
を手に入れることが出来たのですから、今後も狙われる恐れもあります・・・。
さすがこれはマズいだろうと、オークションサイトを運営しているメルカリやヤフオクは、
「現在使用可能な通貨の出品を禁止」
しました。
すると!今度はすぐに、金額を「2万円分」ほど入れた「Suica」などの、
「交通カード」
が「2万円以上」の値段で出品されました。これもすぐに禁止されましたが、もうまさに「イタチごっこ」です。
これは、私は確認していませんが「ミヤネ屋」のスタッフが教えてくれたのは、今度は、
「パチンコの景品交換用の文鎮」
が出品されたそうです。これらの「文鎮」や「釣り針セット」などは、パチンコ店でたくさん玉が出た時に、「玉」と交換してくれて、それをパチンコ屋さんの裏手にある小さな小屋の小さな窓口に持って行くと「現金」と交換してくれるという代物です。全国共通ではありませんが、そのお店では、
「現金との交換ための道具」
として通用するのですね。その意味では、
「地域通貨」
のようなものです。大っぴらではないが大人は誰でも知っているというゾーンですね。
もうこうなると、スゴイとしか言えません・・・。
また先日、福岡で3億8400万円が強奪されたときに、皆が持った疑問は、
「なんでそんな高額な金額を、"現金で"持っていたんだ?」
ということでした。その答えは、
「金(きん)を購入するため」
でした。盗まれた29歳の男性は「貴金属店勤務」だったのです。そして、普通、
「金(きん)の取引は、現金で行われる」
のだそうです。理由は、
「これは売買ではなく両替である」
そうか、この場合の「現金」は、
「金(きん)の兌換(だかん)紙幣」
の役割になるのか!ということでした。
その意味では、表面上は「売買」のように装っていますが、パチンコ店の文鎮は「兌換」の意味合いを持つので、
「両替」
になっているのですね、実質は。
そういった「虚実の皮」みたいなところを突いて来たのではないか、そこまで追い込まれている人がたくさんいるのではないか?ということです。
そういったことまで考え合わせると、
「わずか3万円」
と言っていいのかどうか・・・という気持ちになると同時に、日本の国の現状を考えて暗澹たる気分になるのです。