新・ことば事情
6285「闇の中?薮の中?」
3月28日の「ミヤネ屋」で、マレーシアの金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件を取り上げた中で、スタジオで、解説の野村明大デスクと宮根誠司さんが、
「このまま事件の真相は『闇の中』になってしまうのか?」
というようなコメントをしました。この、
「闇の中」
という言葉を聞いて私は、
「あれ?それって『薮の中』ではないかな?」
と思いました。もしくは、
「真相は闇に消える」
かな。国語辞典では「薮の中」は載っていても「闇の中」は載っていません。
「薮の中」は、おそらく芥川龍之介の作品『薮の中』から生まれた言葉でしょう。
一方の「闇」は、
「闇にまぎれて」「心の闇」「一寸先は闇」
等の表現はありますが、「闇の中」はありません。しかし、意味はよくわかります。
最近は「薮」というものがイメージされにくくなっていることと、野村デスクによると、
「『薮』だと小さい感じがします。『闇』のほうが、もっと訳のわからない深さを感じます」
とのことでした。
*「藪の中」=45万8000件(「藪」)
*「薮の中」= 9万1300件(「薮」)
*「闇の中」=44万7000件
おお、「藪の中」(旧字体の「藪」)と「闇の中」は拮抗、ほぼ同数ですね!
「闇の中」というタイトルの映画もあるようです。
次回の用語懇談会放送分科会(4月)で、「闇と薮」をテーマに、各社の意見を聞いてみたいと思います。
なお、今、書きかけの原稿を見ていたら、「2016年(去年)2月11日」に、こんな書きかけの文章が。
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「ミヤネ屋」のテロップチェックをしていたら、
「真相は闇の中」
という表現が出て来て、「ちょっと待てよ」と。「真相は・・・」と来たら、
「薮の中」
なのではないか?芥川龍之介の、『古今集』か何かから題材を取った作品も『薮の中』だったではないか
真相は「藪の中」でしょうか?それとも、真相は「闇の中」なのでしょうか?
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