新・ことば事情
6278「立ち居振る舞いのリズム」
私は、
「立ち居振る舞い」
という言葉の方が好きなのですが、「居」が抜けた、
「立ち振る舞い」
という言葉も結構古くからあると、『悩ましい国語辞典』(神永暁、時事通信社)の著者「神永暁さん」が書かれているということを、「平成ことば事情6000 立ち振る舞い」(2016年2月)に書きました。
しかし、それでもなぜ、私が「立ち振る舞い」は合わない感じがするのか?ある日突然、
「リズムに問題があるのではないか?」
と思いつきました。「思いつき」です。すなわち、
*「立ち居振る舞い」=タタタ・タタタタ
*「立ち振る舞い」 =タタ・タタタタ
なんですね。「立ち居振る舞い」は「タタタ」の前に「休符」があって、それを「ウ」で書くと、
「ウ・タタタ・タタタタ」
なんです。つまり、
「裏拍のリズム」
なのです。そしてそれは、
「4拍+4拍=8拍」
で、「七五調」に通じる、
「4拍子」
なのです。それに対して「立ち振る舞い」は、
「タタ」
で始まるので、
「頭拍」=「強拍」
ですね。ちょっとベタベタした感じがする。こちらは、
「2拍子」
なのです。
その感覚かな、もしかしたら?と感じたのでした。
そして「平成ことば事情6000」の最後に、
「うーん、こうなると、両方認めるしかないのかなあ。また、次の用語懇談会で聞いてみるかな。」
と書いたのですが、実際に、去年5月に仙台で開かれた「新聞用語懇談会総会」で聞いてみました。
(Q)『最近、原稿やテロップで「立ち振る舞い」という言葉をよく目にするので、そのたびに「立ち"居"振る舞い」と直していたのですが、どうやら「立ち振る舞い」という言葉も、昔からあるようなのです。各社では、両方認めていますか?それとも「立ち"居"振る舞い」だけを認めているのでしょうか?』
【毎日新聞】どちらも使っている社が多いのではないか?弊社は、規定はないがデータベースを調べたら「立ち居振る舞い:立ち振る舞い=10:1」で「立ち居振る舞い」のほうが圧倒的だった。書き手の意識としては「立ち」に対して「居」が「座る」なので、落ち着きが良いのかもしれない。しかし「立ち振る舞い」で原稿が書いて来たら、辞書にも載っている形なので、直しにくい。
【東京新聞】「立ち居」のほうが落ち着く。実際「立ち居」のほうが多い。「立ち振る舞い」が出て来たら「どちらのほうが普通か?」と問いかけて、できるだけ直してもらうようにしている。
【新聞協会・専門委員】「立ち振る舞い」は「立ち居振る舞い」の「略語」ではないのか?「立ち振る舞う」から「立ち振る舞い」に変化して来たのではないか?また「立ち振(ぶ)る舞い」との混同ではないか。
【読売新聞】「立ち居る」から来ているので、「立ち居振る舞い」が元々の形だろう。省略形の「立ち振る舞い」が、ある程度定着してきているのではないか。
という回答でした。