新・ことば事情
6274「最南端か最南か?」
「す・またん」で校閲を担当しているS君という人から、質問のメールが来ました。
「きょう(3月3日)のオンエアで、日本最南端のスキー場『五ヶ瀬スキー場』(宮崎県)が存続の危機にあるというトピックを取り上げたのですが、その中の、
『日本最南端』
という表現が引っかかりました。そのスキー場のHPを確認すると、
『日本でいちばん南にあるスキー場』
と書かれていました。日本で一番南にあるなら、
『日本最南のスキー場』
だろうと、チェックを入れました。『最南端』では、なんだか『岬の先端』にあるような気がしたからです。そのスキー場は宮崎県と熊本県の県境近く、九州の『ど真ん中』に位置しています。これで『最南端』は、何だかなあ・・・と感じたのです。
ところが、担当ディレクターがやってきて日経新聞の記事を示し『最南端』になっている旨説明され、結局オンエアは『最南端』でいきました。
ネットで調べてみると、今までもずいぶん『最南端』で紹介されていました。ただスキー場自体のHPには『最南端』の文字はありません。この場合、『最南端』で良かったのかどうか、道浦さんのご意見をお聞かせくだされば幸いです。」
おお、すごいなあ。こういう細かい所でも、ちゃんと気にしてこだわって、ニュースに取り組んでくれると、私としては、とてもうれしくなります。
そこですぐに、下記のような返事のメールを送りました。
「ミヤネ屋の道浦です。そのニュースはチラッと新聞かネットで見かけましたが、細かく読んでいませんでした。
『なるほど、言われればその通り。気になるな』
と思い、感心しました。ご質問の趣旨は、この九州・宮崎のスキー場に対しての表現で、
『最南端』ではなく『最南』ではないのか?
ということですね。あまり気にしていませんでした。結論から言うと、
『どちらでも良い』
かなあと思います。日本列島の地形から言うと『最も』が付く際に注目されるのは、
『北と南』
で、『西と東』は『どこが最も西(東)か?』は、あまり注目されません。気候との関連が影響しているのでしょう。『北』と『南』では気温が違いますが、『西』と『東』では、それほど気温は変わりませんからね。
ですから、『最北(端)』『最南(端)』は耳にも目にもしますが、『最西(端)』『最東(端)』は、あまり耳にも目にもしません。(あるのは知っています。それについては、以前調べて書いたこともあります)
さて、そこで、『最南端』か?『最南』か?ですが、まず『最南端』の語構成を見ると、
『最(も)・南(の)・端」
という3つの語から構成されています。
このうちの『2つ』がくっつくと、
『最南』と『南端』
の2つの語を作ることが可能です。そこで『最も南のスキー場』は、
『最南のスキー場』か?『南端のスキー場』か?
と言えば、もちろん『最南のスキー場』です。ニュース性は、
『最も=一番』
であることを求めるからです。
ここに『語呂の関係』か、あるいは『強調』の意味で『端』が付いて、
『最南端のスキー場』
となるのは『許容範囲』だと思います。『端』は『地形における一番端』ではなく、
『スキーが可能なエリアの一番端』
だと考えられるからです。例えば九州ではなくて、四国や山口県、島根県あたりにあるスキー場も(あるかどうか知りませんが)、信州や東北・北海道に比べると『南のスキー場』ですが、その意味で『九州・宮崎』は『南端』と考えられるのではないでしょうか?
そういったところで言うと『最南端』もOKだと思います。」
なお、グーグル検索では(3月3日)、
「最南のスキー場」 =1万8700件
「最南端のスキー場」=3万9100件
「最南」 =47万0000件
「最南端」=46万1000件
でした。
納得してくれたようです。